研究課題
放射線適応応答では、細胞の生存率が上昇し、染色体異常や突然変異頻度が低下することから、DNA2本鎖切断(DSB)修復の正確度が上昇していると考えられ、特に非相同末端結合修復(NHEJ)が関与していると推定される。NHEJには「古典的経路」(C-NHEJ)と「代替経路」(alt-NHEJ)の2種類の経路があるため、放射線適応応答の過程にどちらの経路が関与するかを検討した。C-NHEJにはDNA切断の連結酵素の1種であるDNAリガーゼ IVが関与しており、alt-NHEJにはDNAリガーゼ IIIまたはIが関与するとされている。そこで、RNA干渉法を用いて、これらDNAリガーゼの各々について発現量を低下させた細胞を作成し、その細胞における放射線適応応答について微小核形成を指標として分析した。平成25年度までに、DNAリガーゼIV発現抑制細胞では適応応答が抑制されるが、DNAリガーゼIII発現抑制細胞では適応応答が抑制されないことを示唆する結果が得られたが、平成26年度にはさらに実験を重ねて、上記の結果を確認した。また平成26年度は、DNAリガーゼI発現抑制細胞についても検討したところ適応応答が見られたことから、DNAリガーゼIは適応応答に関与していないことが示唆された。これらのことから、放射線適応応答にはDNAリガーゼIVが作用するC-NHEJが関与しており、alt-NHEJの寄与は少ないものと考えられる。C-NHEJはalt-NHEJよりも修復の正確度が高いとされていることから、放射線適応応答においてはC-NHEJ活性が上昇することによって、修復の正確度が上昇しているものと推測される。また、試験管内DSB再結合反応での修復エラーを解析したところ、適応応答条件の細胞ではDNAの欠失範囲が小さくなることが明らかになり、このこともC-NHEJの関与を示唆している。
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Journal of Radiation Research
巻: 55 ページ: 391-406
10.1093/jrr/rrt133
巻: 55 ページ: 690-698
10.1093/jrr/rru011