研究課題
申請者は、シャペロンとその結合タンパク質が、「細胞外・表面からの作用」と「核内での損傷DNA修復過程」の2つの機構により、細胞を放射線抵抗化すると考えている。これまでの本研究で、1)ストレス抵抗性の細胞では、低線量X線(0.2 Gy)照射後、シャペロンHSP27とその結合タンパク質であるannexin IIの放出量が増加することを見出した。機能解析では、2)細胞外のannexin IIが、子宮頸癌由来HeLa細胞や膵臓癌由来細胞における抗癌剤やX線に対する致死抵抗性に関わることを見出した。平成26年度は主に、annexin II細胞外放出機構の検討を行った。放出量の増加は、低線量X線照射後には認められたが、UVC照射後顕著には観察されなかった。また、放出量増加は抗酸化剤N-acetyl cysteine(NAC)処理により抑制された。細胞内の酸化ストレス応答シグナル分子ATM, p38 MAPK, PI3K, Erk1/2の活性化状態を調べた結果、低線量X線照射後p38 MAPKの活性化が亢進していた。さらに、p38 MAPK阻害剤 SB203580で前処理すると低線量X線による放出量増加が抑制された。また、過酸化水素(酸化ストレス剤)処理によるannexin II細胞外放出促進もNACおよびSB203580前処理により抑制された。以上から、低線量放射線によるannexin A2放出促進には、p38 MAPKを介する酸化ストレスシグナルが関わると考えられた。一方、種々の細胞間での比較実験では、X線および過酸化水素致死抵抗性細胞では、低線量X線照射によるannexin II細胞外放出促進が認められたが、感受性細胞では顕著な促進は認められなかった。これらの結果からも、annexin IIの細胞外放出に酸化ストレス応答が関わることが示唆された。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件)
NO TO HATTATSU
巻: 4 ページ: 印刷中
Molecular Medicine Reports
巻: 12 ページ: 印刷中
Journal of Gastroenterology and Hepatology
巻: 29 ページ: 736-741
10.1111/jgh.12445
International Journal of Oncology
巻: 44 ページ: 1685-1690
10.3892/ijo.2014.2317