研究課題/領域番号 |
24510066
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
唐田 清伸 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 特任准教授 (90345017)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 突然変異 / DNAポリメラーゼV / リボヌクレオチド |
研究概要 |
大腸菌DNAポリメラーゼV(Pol V)はデオキシリボヌクレオチド(dNTP)のみならずリボヌクレオチド(rNTP)も基質として用いることを見出していたが、その生物学的意味を考察するためにもdNTPとrNTPの識別に関わるSteric Gateと呼ばれるアミノ酸残基を変異させたPol Vを数種類作製して解析を行った。その結果、変異によってrNTPをより取り込みやすくなった変異Pol Vでは、in vivoの突然変異頻度が減少することが判明した。このことやこれまでのデータなどから、誤りがちなDNA複製を行うPol VはDNA複製中にある頻度でrNTPを取り込み、そのrNTPがRNaseHのターゲットになって分解され、生じたニック部位から忠実度の高いDNAポリメラーゼIがニックトランスレーションDNA合成を行い、結果としてPol Vが導入した変異が修復されるというモデルを提唱するに至った。また、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)によるPol Vの観察では解像度の大幅な改善が必要であったが、まずマイカ基板へのサンプル固定方法を以前のイオン結合を利用した非特異的な吸着方法からストレプトアビジン膜やアミノシランを利用して積極的に結合させる方法に改良した。カンチレバーの探針も始めから細いものを作製するのは困難であることが判明して、プラズマ発生装置を導入して作製した探針をプラズマエッチングにより加工して細くすることにした。それらにより大幅に解像度を向上させることに成功し、今まで球状にしか見えなかったPol Vが突起状構造をもつ複雑な形として観察されるようになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、リボヌクレオチドの取り込みに関与するSteric Gateに変異を持つPol Vを作製し、その変異体の活性を解析することからPol VのRNAポリメラーゼ活性について生物学的意義を見出すことが出来、その成果を原著論文として発表することも出来た。また、rpsL遺伝子をターゲットとしたin vitro DNA合成の突然変異検出系も確立することが出来、現在その系を用いてPol Vの突然変異について解析を行っている。高速AFMによるPol Vの観察ではPol Vの活性化機構の解明という目標には達していないが、解像度の大幅な改善に成功し今後観察を繰り返していくことでその目標も達成できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通りに24年度にやり尽くせなかった研究を継続して行っていく。特に高速AFMによるPol Vの観察ではPol V活性化機構の解明という目標達成に向けて、精力的に観察を繰り返し、さらに重ね合わせによるAFM画像の平均化処理など新たなデータ解析方法も導入して成果につなげて行く。また、確立したrpsL遺伝子をターゲットとしたin vitro DNA合成の突然変異検出系を用いて、rNTPの有無でPol Vの突然変異頻度に変化が生じるかを見ることにより、Pol VがrNTPをDNA中に取り込むことで修復系が働いて過剰な突然変異を抑えているというモデルを実証して行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
Pol Vの新規相互作用因子探索のためにタンパク質のLC/MS/MSによる同定費用として24年度に50 万円を計上していたが、Pol VのSteric Gate変異体の解析や高速AFMによるPol Vの観察などに重点的に労力を注いでいたため24年度はPol Vの新規相互作用因子の探索にまで手が回らなかった。そのため約55万円が次年度に繰り越されることになったが、25年度にPol Vの新規相互作用因子の探索・同定を行い、当初の予定通りLC/MS/MSによるタンパク質同定費用としてその分を消費する予定である。
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