研究課題/領域番号 |
24510066
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
唐田 清伸 熊本大学, 発生医学研究所, 特別研究員 (90345017)
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キーワード | 突然変異 / DNAポリメラーゼV / リボヌクレオチド |
研究概要 |
大腸菌DNAポリメラーゼV(Pol V)がDNA合成中にリボヌクレオチドを取り込むことによってPol Vによって導入された突然変異の一部が修復されるというリボヌクレオチド除去修復モデルの実証をおこなった。それには確立したrpsL遺伝子をターゲットとしたin vitro DNA合成の突然変異系を利用したが、Pol Vによるin vitro DNA合成反応後に計測に十分な量の基質が得られず安定した結果が出なかった。その原因は精製ごとにPol Vの活性にばらつきがあったためであることが分かり、安定して高い活性を持つPol Vの精製法の改良を行った。高速原子間力顕微鏡(高速AFM)によるPol Vの観察では、ストレプトアビジン膜を用いて固定することによりPol Vの特異な形状が観察されてきていたが、高速AFMの探針の動きにともないバッファー中に特定方向の流れが起こりそれによりPol Vがストレプトアビジン膜上で揺れ動くために観察されたアーティファクト画像であることが判明してきた。そこでさらなる基質の固定法の改良を行い、それと同時に金沢大学の協力による高速AFM装置本体の改修によって今までにない解像度の画像が得られるようになった。その結果、Pol Vの補助因子であるβクランプは直径10 nm弱のドーナッツ型の分子であるが、その中心の2 nmほどの穴も明瞭に観察でき、さらに6個のドメイン構造まで判別できるようになった。しかしながら、Pol Vやγ複合体などの大きな分子は観察中に構造が揺れ動くなどするためその形状がクリアに観察できず、まだサンプルの固定法や観察条件の検討が必要である。また高速AFMの解像度に重要な探針は、福岡大学の走査型電子顕微鏡を利用してプラズマエッチングすることでより精度の高い探針を作製することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Pol Vの生化学的解析では、Pol Vの活性・精製に問題が生じてきてPol Vの精製法の改善にかなりの時間を費やしてしまった。また高速AFM観察では、高速AFM装置が設置された熊本大学に異動して高速AFM観察に集中出来る環境に恵まれたものの高速AFM観察のハード面とソフト面からの改良や条件検討に多くの労力を注ぐこととなった。しかしながら、Pol VがRecAフィラメントによって活性化される際の変化を観察するに至るまでには今後も更なる工夫が必要と思われる。その結果、本年度は真新しい研究成果の発表に至らず順調に研究が進展したとは言いがたい。
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今後の研究の推進方策 |
まずはPol Vのリボヌクレオチドの取り込みによってPol Vが導入した突然変異の一部が修復されるというリボヌクレオチド除去修復モデルの実証に集中して研究を進め、その成果を論文としてまとめて発表することを目指す。 高速AFMでは現状でPol Vの構造変化を観察する前段階のPol Vのサブユニット構造の把握自体が難航していて、少なくともPol Vの形状を明らかにするためにはクライオ電顕を用いた構造解析を行う必要があるかもしれない。
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