研究課題
最終年度は大腸菌DNAポリメラーゼV(Pol V)がRecAフィラメントによって活性化される分子メカニズムの詳細な解析を行った。これまでにPol VはRecAフィラメントの3’末端のRecA分子が結合することで活性化されることが分かっており、さらにその3’ 末端のRecA分子中でも最も3’末端側に位置するS117の変異体がPol Vを活性化できない変異体として同定されていたことから、今回RecAフィラメントの3’末端側の最先端部を形成するRecA分子の112~117番目のアミノ酸からなる領域に注目して解析を進めた。その結果、D112やN113の変異体でもRecAはフィラメント形成能と相同組換え活性は保持しつつもS117変異体同様にPol Vの活性化が出来なくなっていた。そこでフォトクロスリンクとMS/MS解析によりRecAのD113~S117領域がPol Vのどの部位と結合しているか調べたところ、Pol Vの触媒活性ユニットであるUmuCの2つの異なる領域が同定された。その内の一方の領域は不活性型Pol V-RecA複合体に見られ他方は活性型に見られることなどからPol V-RecA複合体の活性型と不活性型では結合領域が異なることが明らかになり、これまでに提唱してきたPol V複合体は活性型と不活性型では大きな構造変換が起きるというモデルを強く指示する結果となった。本研究では、Pol Vの活性化機構の解析だけでなく、Pol VがDNA合成中にリボヌクレオチドを取り込むことによってPol Vによって導入された突然変異の一部が修復されるというリボヌクレオチド除去修復モデルを新たに提唱してその実証を行った。また構造解析が非常に難しいPol Vを高速原子間力顕微鏡で観察し、構造学的アプローチからPol V活性化メカニズムの解析を行うことが出来た。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
PLoS Genet.
巻: 11(3) ページ: e1005066
10.1371/journal.pgen.1005066