研究課題/領域番号 |
24510068
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
若杉 光生 金沢大学, 薬学系, 助教 (80345595)
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研究分担者 |
松永 司 金沢大学, 薬学系, 教授 (60192340)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヌクレオチド除去修復 / 静止期 / DSB / ヒストンH2AX / ATM / ATR |
研究概要 |
今年度は、紫外線による塩基損傷がDSBやssDNA等の二次的なDNA損傷に変換されるメカニズムの解明と、生体内での二次的DNA損傷の生成の意義を明らかにすることを目的として実験を行い、以下のような成果を得た。 1. 紫外線により生じる塩基損傷の生成頻度を考慮すると、直接DSBが生成するとは考えにくく、ヌクレオチド除去修復(NER)によってDNA損傷が除去された後のssDNAギャップ中間がエキソヌクレアーゼ等によりプロセシングを経てDSBが生じている可能性が高い。その可能性を検討するために、候補として考えられるExo1、Mus81等の酵素についてsiRNAを用いて発現を抑制した時の影響について解析を行なった。まずこれらの酵素の発現について調べたところ、増殖停止と血清飢餓によってG0期に同調することにより、その発現が増殖期と比べて非常に低下することがわかった。さらにsiRNAを用いてノックダウンを行なったが、二次的DNA損傷の生成を示すATMの1981番目のリン酸化およびH2AXのリン酸化には、顕著な影響は見られなかった。 2. 生体内における休止期の細胞においても培養細胞を用いて観察された反応を同様な反応が生じることを確認するために、修復能が正常なマウスとNERを完全に欠損したXPAノックアウトマウスから胸腺とリンパ節を採取し、単離したTリンパ球に紫外線を照射し、二次的DNA損傷の生成について検討した。その結果、NER反応に依存してH2AXのリン酸化反応が生じることがわかり、生体内の休止期の細胞においても同様な反応が生じることが明らかとなった。また、今後の実験として幹細胞における反応の解析を予定しているが、それにはより少ない細胞で検討する必要があるので、蛍光免疫染色の条件を設定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画を遂行する上で鍵となるのが、着目するDNA損傷応答を活性化する二次的DNA損傷生成機構の解明にある。それはNERによってDNA損傷が除去された後に生じたssDNAギャップ中間体が、エキソヌクレアーゼ等によりプロセシングを経てDSBが生成する可能性が高く、その酵素の同定が極めて重要である。本年度は、その候補として考えられるExo1やMus81等の酵素についてsiRNAを用いて発現を抑制した時の影響を解析したが、G0期に同調した場合にはこれらの発現が対数増殖期と比べて著しく低下しており、その発現の正確な把握が非常に難しかったことが計画の遅れた原因として挙げられる。また、静止期の細胞に効率良くsiRNAを導入する条件の決定に、予想よりも多くの時間が必要であったことも要因の一つである。 また今年度は生体内の休止期細胞のモデルとしてTリンパ球を用いたが、以降の計画として細胞周期をゆっくり回っている幹細胞の反応を検討するために、これまでの解析に用いてきたウェスタンブロッティングやフローサイトメトリーと比較して、より少ない細胞数で解析が可能な蛍光免疫染色の条件検討を行なった。しかし、培養細胞で生じる反応を検出する条件では、バックグラウンドが高く、再現性にも問題があったので、その改善に時間を要してしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検討により静止期細胞に最適化したsiRNA導入の条件を用いて、NERのギャップ中間体のプロセッシングに関わる酵素の同定を進める。今年度検討を行なった以外の酵素について解析を進めていくと同時に、単独で処理した場合に効果が現れない場合を考慮し、可能性のあるものについて複数の酵素を同時にノックダウンした場合の影響についても検討していく。また紫外線照射時の局在性の変化についても注目して解析を行い、その点からも候補を絞っていく。そしてその候補を同定できた場合、その活性の制御機構や、それを欠損した時の紫外線やヌクレオチド除去修復の基質となるDNA傷害剤の影響について、細胞レベルそして個体へと解析を展開していく。また、現在までに明らかになっているシグナル伝達に関わるタンパク質についても、ノックアウトマウス等を入手し、本研究計画で注目している反応の生体内での意義について解析を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し。
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