研究課題
基盤研究(C)
発達期の脳は成人脳に比べて放射線に対する感受性が高く、この時期の放射線被曝は先天奇形や、精神発達遅延、認知機能障害などの発症と密接に関連する。この分子機構を解明するため、マウスなどの動物モデルを用いて多面的な研究が実施されてきた。これらの研究に加えて、多数の検体の放射線曝露が容易で、脳の形態イメージングや、学習や不安などの機能を簡便に解析できるモデル動物を用いることは、様々な曝露条件における放射線影響評価を可能にし、放射線リスクの科学的基盤の深化に貢献しうる重要な研究課題である。本研究ではこのようなモデル動物としてゼブラフィッシュを選択し、発達神経毒性を指標とした放射線影響評価を実施する。平成24年度は、ゼブラフィッシュに、放射線(X線)を様々な条件で曝露し、血液脳関門機能に与える影響を、蛍光生体画像解析を用いて評価した。その結果、受精後8時間(原腸胚期)の時に7.5 GyのX線を照射すると、ゼブラフィッシュの血液脳関門が破綻することを見出した。一方、受精後24時間(26体節期、哺乳類における大脳皮質形成期に相当)では、血液脳関門機能に影響するX線の最小照射量は10 Gyであった。これらの結果は、ゼブラフィッシュの発達神経毒性を指標として、高感度な放射線影響評価が可能であると同時に、発達に伴う放射線感受性の変化も解析できることを示唆している。今後、行動解析や網羅的遺伝子発現解析など、様々な評価系を用いた放射線影響評価を実施し、放射線の発達神経毒性の分子機構解明を目指す。
2: おおむね順調に進展している
予定された研究計画におおむね沿っている。
平成24年度のネットワーク解析の結果を基盤として、発達期における放射線影響に重要な遺伝子候補を抽出する。これらの遺伝子に対するアンチセンスモルフォリノを合成し、ゼブラフィッシュ受精卵にマイクロインジェクションすることにより、その発現をノックダウンする。この個体の発達期に放射線を曝露し、発達神経毒性を評価することにより、これらの遺伝子の放射線影響における機能を検証する。
主として、遺伝子ノックダウンのために必要な試薬を購入する。
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BMC Neuroscience
巻: 13 ページ: 101
10.1186/1471-2202-13-101