研究課題
ダイオキシンが哺乳動物に示す様々な毒性機構は、我々人類の環境汚染問題を改善していく上で、重要な研究領域であるにもかかわらず研究が進んでいない。毒性機構の中で、中心的な役割を果たすダイオキシン受容体(AhR)は、転写因子である。しかしながら、AhRの作用によって誘導発現する遺伝子CYP1A1の、転写開始近傍に結合する基本転写因子Sp1と、AhRとの関係は明らかになっていなかった。AhRがダイオキシンと結合することにより、CYP1A1遺伝子のエンハンサー領域に結合する前後で、転写開始点近傍のSp1結合部位におけるSp1の結合量には変化がないことが明らかとなった。そこで、エピジェネティックな調節機構のひとつである、Sp1のリン酸化状態を調べると、転写誘導が起こる前はSp1がリン酸化されていたが、転写誘導後にはSp1の59番目Serが脱リン酸化されていることが明らかになった。また、CREM遺伝子の発現時に、脱リン酸化に関与するホスファターゼPP2Aが働くことが報告されていたので(Juang, et al. 2011)、PP2A阻害剤であるオカダ酸で前処理を行うと、CYP1A1の発現が抑制された。そこで、転写開始の前後でSp1-Ser59が細胞内で脱リン酸化されていることを示すために、リン酸化Sp1-Ser59を特異的に認識できる抗体を用いて、クロマチン免疫沈降反応(ChIP assay)法を行った。この方法により、ヒトHepG2細胞内において、ダイオキシン処理によるCYP1A1の転写誘導の前後では、Sp1-Ser59のリン酸化が減少していることが明らかとなった。また、PP2Aをノックダウンすることにより、阻害剤の場合と同様に、CYP1A1転写の開始時にSp1-Ser59の脱リン酸化が関与していることを示す結果が得られた。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Ultrasonics
巻: 54 ページ: 1431-1438
doi:10.1016/j.ultras.2014.04.026
Tohoku J. Exp. Med.
巻: 233 ページ: 265-274
http://dx.doi.org/10.1620/tjem.233.265
http://nature.cc.hirosaki-u.ac.jp/lab/2/celltech2/