研究課題
基盤研究(C)
妊娠中のフルタミド(F)処理により雄ラットの外性器は、出生直後限りなく雌の形態(組織学的にも)を示すが、何故、F処理雄個体のみ尿道下裂を引き起こすかは不明である。新生仔時期以降の尿道下裂発達における内因性因子を解析することが本研究の目的であり、出生後の内分泌環境がF処理雄の尿道下裂の有無に影響するとの仮説のもとに、今年度はF投与雄個体を経時的に詳細な組織学的検索を行った。妊娠T系雌ラットに45mg(kg/day)Fを妊娠12日齢から出産前日まで連日経口投与し、出生日、10日齢、20日齢、30日齢、40日齢、50日齢および60日齢に安楽殺後、生殖腺、生殖輸管(輸精管、精嚢腺、前立腺)および外性器を連続切片で検索した。F処理雄群では、出生日に明瞭な尿道下裂は観察できず、外性器の外観は雌個体と類似していた。しかし、組織切片においてペニスと肛門の間に膣様嚢胞の前段階と思われる腺形成が認められた。その腹側には2本の管が走行しており、10日齢には管上皮の終末はこの嚢胞上皮と融合していた。20日齢で嚢胞が陰茎基部に開口した。精巣は対照群と同様に腹腔内にみられたが、片側性の精巣上体、輸精管の形成不全がみられた。精嚢腺および前立腺は明確に確認できなかった。30日齢では片側性の潜在睾丸が確認され、肉眼的な精嚢腺・前立腺の形成は認められなかったが、組織切片上では、輸精管および尿道にそって存在し、これらで複合体を形成していた。50日齢および60日齢の組織切片では、潜在睾丸の精巣からの副精巣/輸精管は欠落していた。観察したすべての日齢において、陰茎亀頭腹側部の形成不全が生じていた。今年度の研究成果からフルタミド投与によって生じる輸精管、精嚢腺、前立腺および外性器の形態学的異常は、新生時期から徐々に生じていることが明らかになり、出生後の精巣由来のホルモン関与が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
初年度である平成24年度は、フルタミド投与胎仔なびに新生仔生殖突起の形態計測の予備実験の検証を行うとともに、出生後の生殖腺、付属器官および生殖突起の構造異常を経時的に組織検索した。フルタミド投与による産仔数の減少により、出生日から10日齢までの間で初期の構造変化を検索できず、平成25年度に繰り越すことになったが、ほぼ計画通りの成果を得ることが出来た。
フルタミド投与雄成体の血中性ホルモン、特にアンドロゲンレベルを測定して、対照正常個体との相違を調べ、生殖腺付属器官および生殖突起の尿道下裂化への関与を明らかにするとともに、出生後10日齢に去勢および去勢処置をしない個体にアンドロゲンを50日間投与して、付属生殖器官および尿道下裂の発生・発達状況を組織学的に検索し、出生後の内分泌環境因子のフルタミド誘導尿道下裂進展への関与を明らかにする。さらに、尿道下裂形成時期における遺伝子探索を、DNAマイクロアレイを用いて行い、関連する形態形成因子のあぶり出しを行う。この研究は連携研究者の井口教授の研究室を使用することが可能である。形態学的所見、内分泌環境のデータ、関連遺伝子発現の結果の総括を行う。
該当なし
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Toxicology
巻: 296 ページ: 12-19
10.1016/j.tox.2012.02.010