研究課題
妊娠したT系ラットに妊娠12日齢から妊娠22日までフルタミドを1日1回経口投与し、出生日から経時的に精巣、付属生殖腺、生殖輸管系の肉眼および組織学的観察を行った結果は次に示すとおりである。1. 亀頭腹側の形成不全(雌化)は出生日から観察されたが、尿道の形成異常(尿道下裂)は40日齢以降に認められた。肉眼的に下裂が観察できない個体であっても、組織学的には尿道構造の異常が観察された。2. 停留睾丸は30日齢以降の個体で高率に生じ、精巣の萎縮や精子の形成不全を伴っていたが、Leydig細胞には特に異常が認められなかった。3. 付属生殖腺に関しては、精巣上体の部分的欠如、および精嚢腺の発達が観察された。膣様嚢胞は出生日の時点で盲嚢として形成され、上皮は雌の膣同様、重層扁平上皮で、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体の発現が認められた。4. 精管は片側的もしくは部分的に欠損しており、尿道に開口せず、精嚢腺排出部の管と合一した。この管は膣様嚢胞に併走してペニス基部まで達し、一部の個体では膣様嚢胞へ開口していた。今年度の研究で、出生日から成熟期まで経時的な観察を行うことによって、尿道下裂の形成時期が明確になった。さらに、精管が尿道と合一せず、盲管あるいは膣様嚢胞に開口していることが明らかになった。以上の結果は、フルタミド処理が、M管由来の輸管系に著しい変化を誘起するともに、尿生殖洞由来の輸管系に雌性化を引き起こすことを示している。一方、尿道下裂は春期発動機とともに明確になることから、精巣由来の性ホルモンの関与が示唆される。フルタミド処理を受けた成体雄個体の血中アンドロゲンレベルは、対照群の数値と有意差がなく、逆に血中エストロゲンの値が有意に上昇していた。これらの結果は、出生後の尿道下裂発達に精巣由来の性ホルモンが関与していることを強く示唆している。
2: おおむね順調に進展している
2年目である平成25年度は、新生仔時期以降、成体60日齢まで生殖突起を含む生殖輸管系の形態計測と出生後の生殖腺、付属生殖腺の経時的に組織検索を完了した。これにより外性器の模式図を完成しつつある。更にフルタミド処理個体60日齢における血中性ホルモンレベルの測定を完了した。その結果に基づき生後10日齢で去勢した個体に20日齢から60日齢まで隔日にプロピオン酸テストステロン(50μg/100g体重)と芳香酸エストラジオール(1μg/100g体重)を投与した個体における各臓器の固定標本を確保した。これらの標本については、順次組織切片の作製に入っており、ほぼ予定通りの進行となっている。
平成25年度において作製した妊娠中にフルタミド投与と出生後10日齢に去勢後、50日間のアンドロゲンあるいはエストロゲン投与を受けた雄個体の各生殖器官および尿道下裂の発生・発達状況を組織学的に検索し、出生後の内分泌環境のフルタミド誘導尿道下裂進展と付属生殖器官異常への影響を明らかにするとともに、胎仔期におけるフルタミド暴露による生殖器官異常に関する模式図の作製を完成する。さらに尿道下裂形成時期における遺伝子探索を、DNAマイクロアレイを用いて行い、関連する形態形成因子のあぶり出しを行う。この研究は連携研究者の井口教授の協力を得て実施する予定である。平成26年度は最終年度であるため、形態学的所見、血中ホルモン濃度のデータ、関連遺伝子発現の結果の総括を行い、報告書ならびに論文作製に尽力する。
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