研究課題/領域番号 |
24510090
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
上道 芳夫 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90168659)
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研究分担者 |
神田 康晴 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70447085)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リサイクル / プラスチック / 触媒 / 化学原料 / ガリウムゼオライト |
研究概要 |
廃プラスチックの約70%を占める炭化水素系プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン)を分別することなく一括して有用な石油化学原料へ転換する精密分解技術を開発するため、ガリウムゼオライト系触媒によるポリプロピレンとポリスチレンの接触分解について検討した。2%Ga担持ZSM-5触媒を用いて、反応温度525℃、触媒/プラスチック重量比0.2でポリプロピレンを分解すると、芳香族炭化水素が高収率で得られ、反応を5回繰り返しても触媒の活性は持続した。しかし、ポリスチレンの分解では触媒表面へのコーキングによって触媒性能は低下し、触媒を繰り返し使用することはできなかった。一方、ポリスチレン/ポリプロピレン混合物の分解では、コーキングが抑制され触媒活性の持続性は改善されることがわかった。コーキング抑制効果はポリスチレン/ポリプロピレン混合比に依存し、ポリスチレン濃度が20%程度以下で顕著であった。混合の効果を反応機構面から明らかにするため、水素あるいはプロピレン共存下でのポリスチレンの分解を行った。水素存在下では炭素析出量が減少し、ポリプロピレンの分解で生成する水素がポリスチレンのコーキングを抑制することが明らかになった。プロピレン共存下でのポリスチレンの反応では、スチレンモノマーの生成が抑えられベンゼンの収率が増加したことから、ポリプロピレンの分解で生成する低級オレフィンもポリスチレンの反応性に大きく影響していることが示唆された。このような結果は、プラスチック混合物の分解において、一方の分解生成物を利用して他方の反応性を制御することが可能なことを示しており、新しい分解手法の開発につながるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガリウムゼオライト触媒を用いるポリスチレンとポリプロピレンの混合物の分解では、外部から水素を添加することなくポリスチレンのコーキングを抑制できることを明らかにした。これによって分別前処理工程を簡素化した炭化水素系プラスチックのケミカルリサイクルプロセスの構築が可能になり、本研究の主目的を達成することができた。さらに、反応機構を解明するため、平成25年度に予定していた水素添加の効果を前倒しで検討し、研究はほぼ順調に進展している。ただし、ポリスチレン/ポリプロピレン混合物のポリスチレン許容量がやや低いことから、触媒改良の継続的な検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度から検討している高性能触媒の開発研究を継続して実施する。並行して、水素と低級炭化水素(エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、ブテンなど)共存下でのポリスチレンの分解を行い、ポリプロピレンから発生する成分がポリスチレンの分解を制御する機構を詳細に解明する。さらに、ポリスチレンとポリプロピレンのモデル化合物としてそれぞれスチレンモノマーと2,4-ジメチル-1-ヘプテン(プロピレン3量体)を用いる反応から、ガリウムゼオライト上での炭化水素系プラスチック混合物の接触分解反応機構の解明を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は研究棟の大型改修工事に伴う研究設備の移設が3月中旬~下旬に行われたため、同時期に開催される学会に参加することができず、旅費相当額の55,821円が未執行となった。この旅費相当額は平成25年8月5日に東京で開催されるグリーンケミストリー研究会シンポジウムに参加するための旅費として使用する予定である。既にシンポジウムの発表申込を終えておりプログラムも確定している。 一方、平成25年度研究費の使途に変更はなく、主に充填ガス、試薬類、バルブ・ジョイント類などの消耗品費として使用する。
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