研究概要 |
S. maltophiliaは12種類の走化性センサー遺伝子を持ち,内分泌撹乱物性が疑われているビスフェノールAをはじめとする様々な芳香族化合物の感知に関与している。これら12種類の走化性センサー遺伝子を網羅的に解析するため、走性センサー遺伝子の破壊株を作製し走化性を測定することにより,感知する化学物質の同定を試みた。 遺伝子破壊株の作製には2回の相同性組換えを別行程に分けて行い,マーカーレスの遺伝子破壊株を作成する手法を用いることで、前年度用いた手法より高効率で取得できた。本手法を用いることによりH25年度において、mcp2, mcp5, mcp6, mcp7, mcp8, mcp10, mcp11の7つの走化性センサー遺伝子の破壊株を作成することに成功した。これらの変異株のうちmcp6およびmcp10について走化性を測定し、感知している化学物質の同定を試みた。 まずmcp6の破壊株Δmcp6について8種の芳香族化合物について走性応答を測定したところ,p-クロロフェノールに対する応答が野生株に比べて63%減少した。このことからmcp6は,S. maltophilia においてp-クロロフェノールを感知していることが明らかとなった。前年度の研究において,mcp5もp-クロロフェノールを感知することが明らかとなっており,走性センサータンパク質Mcp5とMcp6の両者が関与していることが示唆された。 mcp10は緑膿菌の低濃度リン酸イオン走性センサーと相同性を有することから、リン酸イオンに対する走性について詳細な検討を行った。遺伝子破壊株Δmcp10のリン酸飢餓条件下における0.1、0.5mMのリン酸イオンに対する走性応答は、野生株のそれと比較してそれぞれ94, 80%減少した。一方、5mMのリン酸イオンに対しては、両者の応答に大きな差は認められなかったことから、Mcp10が低濃度のリン酸イオンを感知する走性センサーであることが明らかとなった。
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