研究課題/領域番号 |
24510093
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
田中 靖浩 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (50377587)
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研究分担者 |
遠山 忠 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (60431392)
森 一博 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (90294040)
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キーワード | 水生植物根圏微生物 / 環境汚染物質分解菌 / パーソナルケア薬品 |
研究概要 |
本研究では環境中に放出されたパーソナルケア製品(Pharmaceutical and Personal Care Products; PPCPs(医薬品、化粧品、芳香剤等の関連物質))をターゲットとした微生物単独あるいは微生物と水生植物のコラボレーションによる生物学的処理技術の開発を目的としている。平成25年度はまず、前年度までに取得したPPCPs分解菌(医薬品や化粧品の乳化剤や皮膜形成剤として用いられるポリオキシエチレンアルキルエーテル(POE-AE)、沈痛剤のフェネチジンとアセトフェネチジンの原料で、指示薬、殺菌剤として利用されている4-ニトロフェノール(4-NP)を効率よく分解できる微生物)の分解経路を代謝産物の解析、遺伝子レベルの解析を実施した。POE-AE分解菌については、昨年度までに比色法によって当該物質の界面活性剤としての分解性(一次分解)を確認していたが、今年度はTOC測定により、この分解菌がPOE-AEを単一炭素源として完全分解することを明らかにした。また、遺伝子解析により、POE-AE分解に関わる遺伝子群がトランスポゾン上に分布することを示唆する結果を得た。4-NP分解菌については、4-NPが水酸化反応とカテコール開裂反応を通じて分解され、最終的に分解菌の細胞増殖基質と二酸化炭素に変換されることを突き止めた。さらに、その水酸化反応の酵素遺伝子(nitorophenol monooxygenase遺伝子)を特定した。 次に、水生植物根圏へのPPCPs分解菌導入実験を試みた。具体的には、4-NP分解菌を根圏に導入したウキクサの4-NP分解実験を行ったところ、48時間以内での3 mg/L 4-NPの完全分解を達成した。また、2日間栽培を1バッチとした計5回の連続バッチ栽培後も分解菌はウキクサ根圏に定着し、4-NP分解活性も発揮し続けることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、①前年度までに取得したPPCPs分解菌の代謝産物解析と、②当該分解菌を用いた根圏機能強化水生植物根圏の創製を研究実施目標としていたが、それぞれについての達成度は次の通りである。 ①PPCPs分解菌の代謝産物解析: POE-AE分解菌であるS45Y株については、代謝産物の同定はできなかったものの、POE-AEを二酸化炭素まで完全分解することを明らかにした。また、4-NP分解菌のDNR2株についてはnitorophenol monooxygenaseが関与する代謝経路を有しており、4-NPを細胞増殖基質と二酸化炭素に変換することを明らかにした。本実験項目の目的は、取得した分解菌が代謝産物として毒性を有する化合物を産出するか否かをチェックすることであるが、この点に関しては上記の結果からいずれの菌株も毒性化合物の産出は無いことが確認されたといえる。従って、本項目については「おおむね順調に進展している」と判断した。 ②根圏機能強化水生植物根圏の創製:研究実績の概要に示したように、4-NP分解に関する根圏機能を強化したウキクサの創製に成功した。従って、本項目についても「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断できることから、今後の研究推進方策としては当初の予定どおりとする。すなわち、取得した分解菌を用いた微生物製剤の開発と植生浄化ユニットの開発である。まず、微生物製剤の開発には、これまでに取得したPOE-AE分解菌、4-NP分解菌のいずれかを用いる。活性汚泥処理システムに上記分解菌を添加した場合のPOE-AEあるいは4-NP含有廃水の処理・浄化効率を測定し、微生物製剤としての能力を評価する。次に、植生浄化ユニットの開発については、POE-AE分解菌、4-NP分解菌等を導入することで根圏機能を強化した水生植物の浄化能力を維持・向上させうる基板材について検討するとともに、これを利用した植生浄化ユニットの浄化能力を評価する予定である。
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