研究課題/領域番号 |
24510094
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
河邊 伸二 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20252314)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リサイクル / 電波吸収体 / 地上波デジタル / カーボン / フェライト / PP / 反射減衰量 / リサイクルボード |
研究概要 |
日常生活の中でラジオやテレビ放送、家庭用の無線電話、電磁調理器などさまざまな電磁波を利用している。しかしその一方で、電磁波による弊害も拡大しており、病院建築内での携帯電話による医療機器の誤作動問題や社内無線LAN通信障害等の障害発生が数多く報告されるようになってきた。 これらの原因のひとつが建築物の内外における電磁波の多重反射であることから、電子レンジ、無線LAN、家庭内コードレス電話の2450MHz帯の電波対策を施す必要が益々重要になっている。さらに、建築空間においては、2011年に完全移行した地上デジタル放送で使用されるUHF帯(600 MHz)の安価な電波吸収体の開発も急務になっている。 一方、近年、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック廃棄物が大量に排出され、このリサイクルの重要性が高まっている。地球環境維持のため南洋材の合板の使用を抑制する必要がある。 また、UHF帯(600 MHz)を使用する地上デジタル放送用電波は、新しいテレビ塔から発射される。名古屋地区のテレビ塔はすでに近郊の瀬戸に移動し、東京も東京タワーからスカイツリーに移動予定である。従来の高層建物に張ってある電波吸収体はテレビ塔の移動に伴い、正面の位置が変わり、電波吸収効果が低下してしまう。従来の100MHzに変わり600MHzの吸収体が必要になる。 そこで、障害を低減すべく実用可能なフェライトタイルやフェライト・カーボン混入モルタルによる電波吸収体も開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平行二線線路測定法のための新しい装置を開発した。この装置の特徴は、下記の4つである。(1)連続した広範囲の周波数の測定が可能である。 (従来の導波管では測定周波数間が狭い。)(2)周辺環境から電磁波の影響を受け難いことから、都心部においても通常の実験室の鉄筋コンクリート建物内の一室内にて測定実施が可能である。(3)フェライトやカーボン繊維を混入したセメントモルタルのような複合材料供試体の作製において、工作精度の確保が容易である。 (導波管では工作精度が要求される。)(4)電波吸収体を迅速に開発することが可能である。 現在まで、アクリルプレートで構成した測定ボックスを2つ作製し、これらを左右または上下に連結して、反射減衰量を測定する装置を作製した。
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今後の研究の推進方策 |
1)作製した平行二線線路測定法の測定装置の精度を高める。 2)この測定装置にて各種供試体の電波吸収特性を測定・評価する。 3)スラグ、カーボン、フェライトの粒径、混合割合、配置方法を実験と数値シミュレーションにより詳細に検討して、実用的な電波吸収体の開発を目指す。 4)建築材料のリサイクルも視野に入れ、安価で比較的電波吸収効果の高いリサイクルボードを試作する。
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次年度の研究費の使用計画 |
建築材料のリサイクルも視野に入れ、安価で比較的電波吸収効果の高いリサイクルボードを試作する。開発するリサイクルボード供試体は、ペットボトルのキャップと木粉を混合し、この間に、カーボンとフェライトを混入した電波吸収体である。リサイクルボードの製作において、カーボンとフェライトを層状に混入すると、ボードの層状剥離を生じて、ボードの体をなさない。そこで、樹脂を繊維化することにより、カーボンとフェライトの周りを繊維で絡ませ、形を保持する。 カーボンとフェライトをボード内に入れることにより、断面係数に関連する部位は、樹脂繊維で構成し、ボード表面の強度を向上させ、かつ、ボードの曲げ強度も向上させる。このリサイクルボードは、のこぎりで切断可能で、釘打ちもできる。このことは、建築材料として使用するためには重要な要求条件である。
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