研究課題/領域番号 |
24510098
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長谷川 将克 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (40335203)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境負荷低減技術 / ハロゲン元素 |
研究概要 |
電解質としてリチウムイオン電池にはフッ化物塩、マンガン電池には塩化物塩が用いられている。また廃プラスチック中には塩素含有物が6%程度含まれている。廃電池や廃プラスチックを再資源化する際、フッ素や塩素等のハロゲン元素が反応炉内に放出されると、設備腐食や有害物質生成の問題を引き起こす可能性がある。本研究は固体と液体が共存する不均一酸化物中へハロゲン元素が溶解する機構を解明するものであり、廃電池や廃プラスチックのリサイクル時に発生するハロゲン元素の無害化処理の確立に貢献できると考える。(1) 不均一酸化物中への塩素溶解度の測定、(2)液相中への固体分散による塩素溶解促進効果の微視的機構の解明、(3)酸化物を用いたハロゲン無害化処理による廃電池の実験室規模でのリサイクル、を行う。 平成24年度は、ガス平衡法を用いてCaO-Al2O3系への塩素の溶解量を測定した。実験方法の概略を以下に示す。Ar-H2ガスを塩酸浴に通じてAr-H2-H2O-HClとした混合ガスを電気炉内に流入すると、Cl2分圧、O2分圧は一定となる。酸化物を炉内に挿入し、1500℃でガスから塩素を吸収させた。塩素の平衡濃度をJISに基づく滴定法により求めた。 研究成果を以下に示す。塩基性酸化物である固体CaOには塩素がほとんど溶解しなかったが、液体酸化物中に固体CaOを分散させると塩素の溶解が大幅に促進された。これは固体CaOと反応して生成した塩化物CaCl2が固体を溶解して液相量を増やし、さらなる塩素の溶解を促したためと考えられる。さらに、包接化合物11CaO・7Al2O3・CaCl2生成による塩素溶解促進効果を見出した。酸化物中への塩素溶解量が最大となるのは、CaO飽和の液相組成、または包接化合物の組成であると言える。またCaO-Al2O3-CaCl2系状態図を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不均一酸化物CaO-Al2O3系への塩素溶解度の測定について、ほぼ予定通り研究が進んだ。研究を推進する工夫として、試料中の塩素濃度測定を自動化することで電気炉の操作と結果の考察、検討に集中できるようにした。平成24年度に得られた研究成果の一部は、所属の研究科紹介冊子にその内容を掲載した他、学会発表を行った。申請時に予想していた「液相中への固体分散による塩素溶解促進効果」に加え、「包接化合物生成による塩素溶解促進効果」を見出したことは大きな成果と言える。平成25年度以降、包接化合物の生成条件についても明らかにし、廃電池や廃プラスチックをリサイクルする際に不可欠な酸化物を用いたハロゲン元素の無害化処理に関する研究の基礎を確立したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、CaO-SiO2系、CaO-B2O3系、MgO-P2O5系等の不均一酸化物中への塩素溶解機構について調査する。平成24年度にはCaO-Al2O3系について塩素は液体酸化物へ取り込まれるが、液体中に塩基性酸化物の固体を分散させると溶解が促進されることを明らかにした。さらに、包接化合物生成による塩素溶解促進効果を見出したため、その生成条件については引き続き調査する。また、廃棄物処理では強塩基性であるアルカリ金属酸化物と塩素との反応を熱化学的に解析する必要がある。塩素溶解機構に及ぼすアルカリ金属酸化物添加の影響の調査も計画している。 平成26年度は、走査型電子顕微鏡と電子プローブエックス線マイクロアナリシスを用いて、ハロゲン元素がどのような微視的機構で不均一酸化物中へ溶解するかを調べる。また不均一酸化物を用いて、実験室規模での廃電池のリサイクルを行う。不均一酸化物を添加して廃電池を加熱し、廃電池に含まれるマンガンやリチウムなどのレアメタルを回収しながら、ハロゲン元素を酸化物中へ吸収するために適切な条件(温度、処理時間、ガス雰囲気)を調べる。還元雰囲気中で温度と処理時間を変え、レアメタルを単体分離し、ハロゲン元素は酸化物中へ吸収させることを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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