国内で年間1900万トン排出される未利用バイオマスである食品廃棄物の利活用技術の基盤構築を目的に、C5・C6糖を高収率で発酵可能な担子菌Trametes versicolorによるバイオエタノール生産について研究を進めている。本年度はエタノール生産のスケールアップの観点からジャーファーメンターでの大量発酵に関する検討を中心に行った。 ジャーを用いた培養では菌糸体の生育に偏り、発酵がうまく進行しなかったため、通気や撹拌を考慮した条件設定が必要であった。その中で、T. versicolorがフラスコを振盪させた場合でも発酵可能な性質を有していることを見出だし、従来の静置培養と同等のエタノール生産性を得るに至った。これをもとに、デンプンを基質としてジャーによる発酵試験を検討した結果、DOやpHのコントロールをすることなく、フラスコ培養レベルに近い良好な収率でエタノールを生産することに成功した。 そこで、生ごみを原料としたジャーでの発酵試験を行ったところ、糖化酵素を加えていないにもかかわらず、デンプンの分解に伴い、エタノールへの速やかな変換が認められた。 担子菌でのジャー培養でのエタノール生産が実現したことで、さらなるスケールアップならびに食品廃棄物の新たな利活用法としての応用が期待できる。今後、大量処理を想定した詳細な条件設定により、食品廃棄物の効率的なリサイクルシステムの確立を目指したいと考える。
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