研究課題/領域番号 |
24510103
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
原田 英美子 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (20232845)
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研究分担者 |
長谷川 博 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (00090457)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オオカナダモ / 水生植物 / 沈水植物 / ファイトレメディエーション / 重金属 / マンガン / セシウム / メタロミクス |
研究概要 |
代表的な単子葉沈水植物であり重金属耐性・蓄積性を持つことが報告されているオオカナダモ(Egeria densa)を用いて重金属集積機構を解明し、水圏の環境浄化および有用金属の回収のための技術開発を行う。本年度は、以下の2つの課題について重点的に推進した。 1)野外のオオカナダモの重金属集積性の検討:オオカナダモを琵琶湖水系から採集し、酸分解ののちICP-AES (誘導結合プラズマ発光分光法)で各種金属の定量分析を行った。植物の生育環境から水および土壌も採集し金属濃度を測定することにより、濃縮係数を算出した。この結果、オオカナダモは環境中の種々の重金属を効率的に濃縮し、特に陸生のマンガン集積植物に匹敵する量のマンガンを植物内に蓄積していることがわかった。 2)オオカナダモのセシウム吸収機構の解明:2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故により、大量の放射性物質が飛散した。水圏におけるCsのファイトレメディエーションを実現するためには、水生植物におけるCsの集積性について明らかにする必要があると考えられた。そこで、野外でサンプリングした植物体、水、底泥の放射性Cs濃度を測定した。また、実験室内でCsCl処理した植物の高解像度micro‐XRF(micro X-ray fluorescence,マイクロ蛍光X線)イメージングを行ったところ、葉の細胞壁もしくはアポプラスト領域にCsが局在していることが判明した。加えて、KについてもCsと同様の部位での局在が見られ、Cs特異的な局在部位は確認できなかった。したがって、植物体中においてCsはKとほぼ同じ挙動を示すと考えられた。さらに、実験室内での栽培系を用いて、Csの吸収機構を調べたところ、オオカナダモはセシウムを底泥から直接吸収しているのではなく、水から葉面を介して取り込んでいると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請の際には、遺伝子解析をH24年、放射光実験をH25年に行うとしていたが、この順番を入れ替えて実験を遂行している。 2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故の除染活動も水生植物を利用すること考え、申請の際にはあまり重要視していなかったセシウムのオオカナダモによる吸収に関する実験も加えた。セシウムの放射光蛍光X線分析による元素イメージングはこれまであまり研究例がないことから、条件検討が必要と考え、H24年度にSPring-8の利用申請を行った。また、オオカナダモからの遺伝子抽出・ライブラリ作成の際には、多糖の混入以外に、共生している微生物由来の遺伝子の混在が問題となることが申請後明らかになった。そこで、オオカナダモからの遺伝子単離法を検討するとともに、野外のオオカナダモに共生する藻類・微生物を、PCRを用いた菌叢解析で明らかにする実験も本プロジェクトに加えることとし、準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載したオオカナダモの金属集積に関する研究は予定通り進める。オオカナダモは野外で生育している場合、環境要因によって金属集積能が左右さる可能性が考えられたため、環境影響に関する調査を項目を増やして重点的に行う。また、野外のオオカナダモに共生する藻類・微生物を、PCRを用いた菌叢解析で明らかにする。どのような生物とオオカナダモが共生しているかを把握したうえで、大規模遺伝子解析を行う。 さらに、オオカナダモを用いた放射性元素の除染や、水圏における放射性セシウムの動態にオオカナダモなどの水生植物がどのように関与しているかを明らかにする研究課題も追加する。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度開始時に研究室の文房具を購入する。
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