研究課題/領域番号 |
24510103
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
原田 英美子 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (20232845)
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研究分担者 |
長谷川 博 滋賀県立大学, 環境科学部, 名誉教授 (00090457)
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キーワード | オオカナダモ / 水生植物 / 沈水植物 / ファイトレメディエーション / 重金属 / マンガン / セシウム / メタロミクス |
研究概要 |
昨年度、沈水植物オオカナダモがマンガン(Mn)、セシウム(Cs)など特定の元素を集積する可能性があることが示された。本年度は、琵琶湖東岸の集落の環濠で、春から秋にかけて定期的に観測および採集を行った。また、夏に福島県でオオカナダモを採集し、放射性Csの測定を行い、昨年の結果と比較した。 植物体のMn集積量の季節変動を調べたところ、4月~6月の間で増加し、7月~9月の間で減少していた。植物体の重金属集積性に影響を与える可能性がある環境パラメータを各採集地で測定した。環境水pHとMn集積量の関連性に注目し、屋内の栽培系を用いてpHを変化させ植物体を処理したところ、Mn蓄積量は野外で採集した植物体と比較して著しく低かった。また、酸性、中性、アルカリ性処理区間の比較ではMn集積量に有意な差はなかった。これらの結果から、Mnの蓄積要因に水のpHは関係しないことと、野外では何らかの環境要因がオオカナダモのMn集積性に寄与していることが示唆された。 前年度に行ったマイクロ蛍光X線分析により、細胞壁に金属が分布していることを示す元素イメージング画像が得られた。オオカナダモから有用金属であるMnを効率的に回収するため、細胞壁を分解する手法の開発を試みた。弱酸性条件下で細胞壁分解酵素処理を行い、遊離したMn量を測定した。この結果、植物体のMnの多くは細胞壁に吸着しており、酵素処理で効率よく抽出できることが判明した。さらに、酵素を含まない弱酸性の緩衝液のみで植物体を処理しても大部分のMnが抽出できたことから、オオカナダモのMn蓄積能の一部には植物体表面に付着している藻類が寄与していることが推定された。オオカナダモの付着藻類の多様性をrRNAの配列を用いた分子生物学的手法で調べたところ、シアノバクテリアの一種ユレモ属(Oscillatoria sp.)の可能性が高い遺伝子断片が検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終年度に計画していた、オオカナダモを用いた有用金属回収に関する手法の開発は、植物体内の金属の分布および蓄積機構の解明と関連しているため、前倒しで開始した。
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今後の研究の推進方策 |
野外での植物体と屋内で人工栽培した植物とのMn含有量が大きく異なることから、何らかの環境要因がMn集積に関与している可能性が高い。付着藻類が植物に及ぼす影響が無視できないと考えられたことから、関連する藻類の金属集積能も併せて調査する。
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