研究課題/領域番号 |
24510105
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
小林 潤 工学院大学, 工学部, 准教授 (60314035)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リサイクル技術 / 電磁波 / 鉛ガラス / 誘導加熱 |
研究概要 |
本年度における研究計画に則り、各種炭素材料の高周波誘導加熱特性および、CRTガラス(ファンネルガラス)・炭素混合物の高周波誘導加熱による昇温・溶融挙動について実験的検討を行った。まず、各種炭素材料の加熱特性について、黒鉛化度の異なる炭素繊維微粒子,木炭,活性炭,電極剤,黒鉛るつぼを用いて高周波加熱実験を行った。その結果、周波数250 kHzでの誘導加熱では粉末状および粒状の炭素を用いた場合ほとんど常温のままであったが、木炭や黒鉛るつぼ等のバルク体炭素を用いることで1000℃近くまで昇温させることが可能であることが明らかとなった。次に、黒鉛るつぼに100μm程度に粉砕したCRTガラス粉末を投入し加熱用コイルの巻数を変化させて高周波誘導加熱を行い、CRTガラスの溶融挙動について検討した。実験後の試料を観察したところ、コイルを2巻きにすることでCRTガラス粉末が軟化し固着する現象が確認された。また、炭素粉末試料と混合させた場合においても溶融状態となることを確認している。しかし、今回の加熱条件では完全な溶融状態にはならず、装置の断熱性などに課題を残した。このことを踏まえ、高周波ではなくマイクロ波(2.45 GHz:電子レンジ)を用いて同様の検討を行ったところ、粉末状の炭素を1g用いた場合でも数秒程度で1000℃以上の高温に達成することが明らかとなった。当該条件下でCRT粉末を1g混合させ加熱したところ、溶融状態になることが確認された。また、重量減少も確認されたため、CRTガラスに含まれる酸化鉛が還元された可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数百kHzの高周波を利用した誘導加熱においては、高温にするためにかなりの量の炭素が必要であることが分かったが、出来るだけ少ない炭素量での昇温の可否について検討する必要があると考え、新たにマイクロ波を用いた実験を行ったところ、非常に良い結果が得られた。また、加熱・溶融後の試料重量を測定したところ、重量減少が確認されており、還元反応の進行が示唆されている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度実施した各種炭素材料の高周波誘導加熱特性試験および各種ガラスの溶融特性試験の結果に基づき、実際のCRTファンネルガラス(鉛ガラス)を対象とした高周波誘導加熱・還元反応実験を実施し、鉛の分離・資源回収の可能性について議論する。先に述べたとおり、当初の計画では高周波(数百kHz程度)を用いて誘導加熱により高温溶融・還元反応を行う予定であったが、マイクロ波の適用性が高いことが実験的に明らかになったため、今後はマイクロ波加熱を用いた鉛ガラスの還元挙動についても検討を行うこととする。 炭素はその結晶構造により様々な物性が異なることはよく知られているが、還元反応に適用する際も同様に結晶構造が影響を及ぼすことが予想される。実際、黒鉛構造を有するカーボンファイバーと非晶質な炭素微粒子を還元剤として用いた場合の酸化鉛の還元反応挙動はそれぞれ異なっており、非晶質な炭素を用いた方が反応性に富む傾向にあることを一部確認している。一方、高周波誘導加熱における熱源としてはある程度の導電性が求められ、非晶質炭素のみでは熱源として十分に機能しない可能性がある。そこで、前年度の結果に基づき、高周波誘導加熱に最適と思われる結晶性・非結晶性炭素比率で鉛ガラスの還元反応を行い、その反応性や消費される炭素の選択性などについて定性的な評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後は消耗品として使用する各種試薬や分析用標準ガスなどの購入に主に充当する予定である。また、成果発表(化学工学会第79年会(岐阜大学)での発表を予定)のための旅費などにも用いる予定である。
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