メディエーターであるメチルビオロゲン(MV)、所定濃度の亜セレン酸あるいはセレン酸を含む1 Mリン酸緩衝液(pH6)を電解液とし、Arバブリングで除酸素した後、カーボンフェルト電極を作用極として、定電位-0.8 V vs. Ag|AgClで電解液が青色に着色し始める(電極還元されたMVが余る)まで電解した。未処理の元素態セレン(Se)を含む工場排液にはオキサニオンが10~0.1 mM含まれるが、初期に含まれる亜セレン酸が1.0 mM以上の場合、本反応により電流効率95%以上で99%以上の亜セレン酸が除去でき、その大半がSeとして回収された。しかし、亜セレン酸が0.1 mMの場合、除去率は94%に、回収率は87%に減少し、電流効率も70%程度であった。これは、電解液着色までの電解では6μM程度の亜セレン酸が残ることで説明できた。MVによる亜セレン酸還元は電極近傍の電解液中で起こるため、Seは電極表面に析出せず、回収に適する電解液に懸濁した状態で得られる。また、電解液量を13倍に増やした場合でも、回収率は若干減少するが除去率は99%以上で変化しないこと、電解液を除酸素しなくても電流効率が5~10%低下するが回収率は変化しないことがわかった。一方、セレン酸は亜セレン酸と比べて除去、回収され難く、それぞれ13%、10%であった。しかし、電気化学的にセレン酸が還元された例はほとんど報告がなく、今後電流効率の向上を検討したい。 セレンを含む排液中で検出された元素情報を基に、本還元反応を妨害しうる物質を推定し、亜セレン酸の除去、Seの回収に対する影響を検討した。検討した範囲で電流効率を大きく低下させる物質はなかったが、Fe2+の場合、回収されたセレンにFeが混入した。 上記のように、解決すべき課題が残存するが、本反応によって亜セレン酸からSeを高効率で回収できることを示した。
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