研究概要 |
本年度は、次世代シーケンサーを用いたSphingomonas bisphenolicum AO1株のゲノム全塩基配列決定とAO1株遺伝子組換え体によるビスフェノールA(BPA)分解能の向上に向けた研究を行った。特に、後半の研究はAO1株の環境汚染物質分解能の安定性向上を目指した研究である。 AO1株の全ゲノム解析では、Roche社の454シーケンスシステムを用いて、AO1株から抽出した全ゲノムの解読を試みた結果、リードとして755,334個、総塩基数として527,626,490bpを得ることができた。得られた情報を基に、GS de novo assemblerでアッセンブルした結果、contigは95個に集約し、総塩基数は5,102908bp、平均のカバレッジは約100となった。同様の解析をCLC genomics workbenchで行った結果、contigは421個にしか集約されなかったが、総塩基数は5,282,383bp、平均カバレッジは約100となり、用いたソフトの違いによる大きな解析結果の違いはなかった。これまでの研究で、AO1株には1本の染色体DNAと4本のプラスミドDNAが確認されているが、今回の結果からはこれらを分けて解読するまでには至っていない。 AO1株組換え体によるBPA分解能の向上に向けた研究では、AO1株で利用可能なベクターであるpJN105を用いた。PCR法を用いて推定プロモーター領域を含むbisdAB遺伝子領域を増幅させ、pJN105のクローニング領域に挿入し、エレクトロポレーション法で組換えAO1株を作成した。作製した組換えプラスミドはAO1株細胞内でも安定に保持されていることを確認し、組換え体の休止細胞を用いたBPA分解実験を行ったが、bisdAB遺伝子組換えによる顕著なBPA分解の向上は確認されなかった。
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