研究課題/領域番号 |
24510111
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
尾関 和秀 茨城大学, 工学部, 准教授 (20366404)
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キーワード | ハイドロキシアパタイト / 放射性物質 |
研究概要 |
平成25年度は、当初の計画通り、ハイドロキシアパタイト(HA)多孔体作製及びゼオライト以外のケイ酸塩としてモンモリロナイト、カオリナイトの吸着特性(セシウム(Cs)またはストロンチウム(Sr))を評価した。また、平成24年度に新たに課題となった海水中におけるHA及びモンモリロナイトのCs、Srの吸着能の評価も行った。 HAの多孔体作製については、予備実験として焼結加熱によるSr吸着率の低下率を予測するために、加熱した粉末HAのSr吸着率を測定した。その結果、焼結に必要な700℃では、Sr吸着率が30%以下にまで低下し、未加熱時の半分以下の吸着率となることが明らかとなった。また、密度30%で作製したHA多孔体の場合、Sr吸着率は10%まで低下したが、圧縮強度は0.6MPaとなり、形状を保持することが可能であった。 モンモリロナイト及びカオリナイトのSr及びCs吸着特性については、モンモリロナイトがSr及びCsともに90%以上の吸着を示したのに対し、カオリナイトは20%以下に留まったことから、カオリナイトは吸着剤としては不適であると判断された。 海水中での吸着率に関しては、Csに対してはHAは0%、ケイ酸塩であるモンモリロナイトは10%以下の吸着率を示した。またSrに対しては、HAは23%、モンモリロナイトは5%以下の吸着率に留まった。このことから、海水中では様々なイオンの干渉により、Cs、Srの吸着率が著しく低下することが明らかとなった。しかし、モンモリロナイトにHAを付加することで、Csの吸着率は10%、Srの吸着率は20%以上改善した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の計画では、HA多孔体作製及びゼオライト以外のケイ酸塩としてモンモリロナイト、カオリナイトの吸着特性(セシウム(Cs)またはストロンチウム(Sr))の評価及び海水中におけるHA及びモンモリロナイトのCs、Srの吸着能の評価を行うことが掲げられた。結果は、HA多孔体の作製を行いSrの吸着率を測定したところ、粉末が60%程度にあるのに対し、10%程度に留まることが明らかとなった。これは、多孔体作製時の加熱処理によるものとバルク体にしたことによる表面積の低下があげられる。これについては、今後、気孔率の上昇や焼結温度の低減等の改善策が考えられる。 ゼオライト以外のケイ酸塩については、モンモリロナイト及びカオリナイトの吸着率を測定し、モンモリロナイトがCs、Srの両イオンに対して、高い吸着率を示すことが明らかとなった。しかし、海水中では吸着率の低下が著しいことも明らかとなったことから、今後、HAとの複合化による吸着率の改善策も示唆された。 以上より、多孔体作製については改善の余地が認められたものの、その他の計画については順調に推移していることから、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度に残された課題として多孔体の作製を継続するとともに、申請時の計画であるHAの薄膜におけるSrの吸着能を検討する。多孔体の作製については、HA単体における作製が困難であった場合には、構造体としてケイ酸塩を活用し、HAを複合化させるなど、新たな手法を検討していく予定である。HA薄膜については、Sr吸着率に対する薄膜の結晶性や膜厚の影響等について検討を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、加熱処理による多孔体作製において、吸着率が低下するなどの課題が発生したため、多孔体作製に少し遅れが生じたことから、次年度使用額が生じた。 「今後の研究の推進方策」でも記載した通り、平成26年度においては多孔体作製の手法として構造体としてケイ酸塩を活用も検討するなど、新たな手法も視野に入れ、当初計画のHAの薄膜におけるSrの吸着能評価に加え、多孔体作製を継続して行う予定である。
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