研究課題/領域番号 |
24510115
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
日比野 俊行 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (70357846)
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キーワード | 層状複水酸化物 / ハイドロタルサイト / ハイブリッドゲル / ナノコンポジットゲル / イオン交換 / 吸着 |
研究概要 |
高分子ゲル-層状複水酸化物複合体の陰イオン吸着剤・繰返し使用を想定して、層状複水酸化物(LDH)での繰返し処理検討を行った。まず、炭酸イオンを含有する炭酸型LDHを合成し、脱炭酸と同時に目的イオン(本検討では塩化物イオン)と交換する方法で処理した。得られたLDHを、炭酸ナトリウム水溶液で処理して塩化物イオンを炭酸イオンで交換して脱着し、その後、上記の脱炭酸の方法で再び塩化物イオンを含有させるという処理を繰り返した。脱炭酸処理には、酢酸緩衝液にNaClを加えた水溶液(A液)とHCl水溶液をエタノールで希釈した液(B液)を用いて比較した。高結晶性炭酸型LDHで、かつ酸の量が適正範囲であれば、酸による溶解減量はほぼなく、炭酸イオンから塩化物イオンへの100%近い交換が報告されているが、低結晶性LDHが用いられる状況も想定されることから、結晶性による相違を比較した。低結晶LDHでは脱炭酸処理において、プロトンがLDHの金属水酸化物層を溶解させる反応に、高結晶性LDHと比べてより多く使われ、その分、炭酸イオンを二酸化炭素ガスとして系外に追い出す脱炭酸効率が落ち、結果として塩化物イオンへの交換率とLDHの回収率が低下する傾向がみられた。繰返し交換全体においては、B液のほうが、低結晶LDHに適していることも示唆された。また、アガロース-LDHナノコンポジットのハイブリッドゲルを乾燥させてからの復水再生検討も行った。大気中で風乾後、風乾物または様々に復水させたものを、硫酸イオンの吸着を行って、ゲル状態のままのものと比較し、その性能を評価した。いずれも、元の乾燥前状態での単位重量当たりの吸着量で比較すると、吸着量が1/5から1/3となっており、単純な風乾では吸着能力の低下があることが分かった。しかし、風乾で大幅に重量を減少できるメリットはあった。以上、吸着剤応用に資する有益な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
吸着剤としての再生・繰返し使用を想定した検討では、LDHにおいて目的陰イオンの吸着と脱着の繰返し処理を行った。塩化物イオンをLDHから炭酸イオンで脱着する処理と、逆に酸を用いた脱炭酸反応経由で塩化物イオンを再挿入する処理を繰返した。結晶性の相違による反応性の違いを明らかにし、応用に資する有益な知見を得た。また、アガロース-LDHナノコンポジットゲルを乾燥させてから用いる検討を行い、その吸着能力の性状を把握した。以上の通り、当初の計画に沿って順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、当初の予定にあった(1)乾燥させたハイブリッドゲルの徐放性の検討と(2)ハイブリッドゲルの機械的強度向上の検討を行う。(1)では、LDHナノプレートを用いたナノコンポジットのハイブリッドゲルまたはそれに準じた複合材で、徐放性の検討を行う。高分子ゲルをLDHのバインダーとして利用するという観点から、平成25年度のハイブリッドゲルの乾燥・復水再生利用の検討と関連付けながら検討を進める。(2)では、アガロース以外の高分子若しくは多孔体について、アガロースとの混合利用などを検討する。また、最終年度であるので、状況に応じて全体を補足する検討も適宜行う。
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