研究課題/領域番号 |
24510119
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
花泉 修 群馬大学, 理工学研究院, 教授 (80183911)
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研究分担者 |
三浦 健太 群馬大学, 理工学研究院, 准教授 (40396651)
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キーワード | ポリマー光導波路 / 光スイッチ / プロトンビーム描画 |
研究概要 |
本研究では、一般に低コストで低消費電力動作が可能な、ポリマー光導波路で構成されたマッハツェンダー(MZ)型熱光学スイッチを、プロトンビーム描画(Proton Beam Writing:PBW)と呼ばれるイオンビーム照射技術を用いて作製を試みている。ポリマー材料の屈折率がプロトン照射によって向上する効果を利用することで、マスクレスで光導波路のコアを直接描画することが可能である。 これまで、我々は、一般的なポリマー材料であるPMMA(Poly(methyl methacrylate))に対し、単純Y分岐(分岐角度2°)からなるMZ型導波路をPBWで直接描画して熱光学スイッチの作製を試みており、波長1.55μmでの基本的なスイッチング動作(スイッチング電力:約44mW、消光比:約9dB)を確認している。しかしながら、PMMAは、耐熱温度が低い点にやや問題があるため、より耐熱性に優れた材料で熱光学スイッチを構成すれば、スイッチング特性が更に向上する可能性がある。 そこで、平成25年度は、PMMAに比べ耐熱性が高いPDMS(Poly(dimethylsiloxane))を構成材料として新たに採用し、PBWによるPDMSへのMZ型導波路の描画を行った。Si基板に膜厚30μm程度のPDMS膜をスピンコートで成膜後、プロトン照射エネルギー750keV、照射量40-100nC/mm2の範囲の下で導波路を描画した。分岐部分はPMMA採用時と同じく分岐角2°の単純Y分岐とし、素子の全長は30mm程度とした。描画後、波長1.55μmでの光導波特性を評価したところ、MZ型熱光学スイッチを動作させるために必要なシングルモード導波路を構成できていることを確認した。今後、このMZ型導波路に対し、位相シフターとしてのTi薄膜ヒーター及びAl電極を装荷し、光スイッチング特性の評価を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、プロトンビーム描画(PBW)技術を用いてマッハツェンダー(MZ)型ポリマー光導波路を直接描画し、それに対して独自の熱解析により設計されたTiヒーター及びAl電極を形成して低消費電力熱光学スイッチを実現することである。我々は、 現在までに、既に熱光学スイッチを実際に試作し、基本的なスイッチング動作の確認しているが、スイッチング電力及び消光比は、それぞれ約44mW、約9dBにとどまっており、目標値(それぞれ5mW、20dB程度)には至っていない。平成25年度は、これらの値を改善すべく、これまで材料に使用していたPMMAに比べ耐熱性に優れるPDMSを新たに採用し、課題の抜本的な解決を目指した取り組みを行った結果、PDMSからなるMZ型熱光学スイッチの実現の見通しを得ることができた。 以上を総合的に考え、現在までの本研究は、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、まず、平成25年度の研究結果により得られた、PDMSからなるMZ型シングルモード光導波路を用い、MZ型熱光学スイッチを試作し、そのスイッチング特性を評価する予定である。その後、本研究の目標の一つである素子の小型化も目指し、アンテナ結合型Y分岐の導入も試みる。アンテナ結合型Y分岐は、研究代表者が特許を取得しており、単純なY分岐に比べ、分岐角度を約2倍(3°程度)にできるため、素子の小型化が可能となる。PBWによりアンテナ結合型Y分岐のような特殊な構造を精度良く描画できるかどうかがポイントとなるが、PBWは微細加工技術として開発されたものであることから、PBWは我々の目的を達成する上で最適な直接描画技術と考えている。 まず、ビーム伝搬法(BPM)を用いたシミュレーションにより、PDMSからなるアンテナ結合型Y分岐の最適構造の設計を行い、低損失分岐(0.1dB以下程度)が可能な範囲で最大の分岐角度を見つけ出す。その設計に基づき、PBW技術により、PDMSからなるアンテナ結合型Y分岐の描画を行う。その過程の中で、問題点を洗い出し、必要なPBW技術の開発も新たに行いつつ、研究を進めていく。最終的に、このアンテナ結合型Y分岐を含んだMZ型光導波路を描画し、それに対してTiヒーターやAl電極を装荷して熱光学スイッチの試作にまで漕ぎ着ける計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、水晶発振式成膜コントローラーなどの設備備品費に充てる予定である。水晶発振式成膜コントローラーは、現有の真空蒸着装置と組み合わせることで、薄膜ヒーター及び電極の形成時に行うTi及びAl薄膜の膜厚をより精密に制御可能となり、熱光学スイッチの低消費電力化につながるものと期待できる。これは平成25年度に購入予定だったが、平成25年度は、新たにPDMSからなるMZ型光導波路の作製及び評価を中心に研究を進めていたため、購入を見合わせていた。しかしながら、最終的に、低消費電力な熱光学スイッチを実現するには、Tiヒーター及びAl電極の厚さの制御が必須と思われるため、平成26年度に最新機種を購入することを計画している。 前述のように、現時点では水晶発振式成膜コントローラーなどの設備備品を中心に購入する計画であるが、試料の作製や評価に使用する光学基板や試薬類及び機械加工部品等の各種消耗品の購入にも充てる。また、平成25年度中の研究成果の発表は、平成26年度開催の各種学会で行うことを考えており、それに伴う国内旅費および国外旅費に使用する。平成25年度の成果に関連する新たな論文投稿も準備中のため、その投稿料にも充てる計画である。
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