研究課題
荷電粒子に対する感受性が高いシロキサン系材料(Poly-dimethylsiloxane:PDMS)をSi基板上に30μm程度の厚さで形成し、その試料に対し、日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所内の3MVシングルエンド加速器を利用して光導波路の直接描画を行った。直径1μm程度に集束された750keVのプロトンマイクロビームをPDMS薄膜試料上で走査し、試料中にマッハツェンダー型の光導波路構造を埋め込み形成した。ビーム走査範囲(800μm×800μm)と真空内試料ステージの最大駆動範囲(40mm×40mm)を組み合わせることで、40mm×20mmの範囲にコア径8μmの光導波路を形成した。PMMA材料等と比べ、より微弱な照射量から屈折率変化が発現し、照射量10-100nC/mm2において目的とする導波路構造の形成が確認された。更に、適切なプロトン照射エネルギーを選択することで、荷電粒子飛程のブラッグピーク部分にのみ導波路コアが形成される条件を見出した。これにより、単一のPDMS薄膜のみに光導波路を内包させることに成功した。形成したPDMS光導波路に波長可変レーザを用いて波長1.55μmの光を入射させ、赤外ビジコンカメラを用いて出射光を観察したところ、シングルモード導波路としての動作を確認することができた。このPDMS光導波路を利用したマッハツェンダー型熱光学スイッチも試作したところ、基本的な光スイッチング動作を確認することができた。PDMSは、本研究で当初用いていたPMMAに比べて耐熱性に優れているため、熱光学効果を利用した光スイッチング素子用の材料として適している。本研究の一連の成果により、ポリマー材料を利用した光スイッチング素子の研究開発が加速するものと思われ、光スイッチを用いる光ファイバネットワーク等の一層の発展に寄与するものと期待される。
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials and Atoms
巻: 348 ページ: 218-222
http://dx.doi.org/10.1016/j.nimb.2014.12.041
http://www.el.gunma-u.ac.jp/~hana/