研究実績の概要 |
本研究ではタンデム加速器の特長を生かしたRI生成・加速法の開発を目指した。これにより、寿命が数分以上の核種に限られるものの、低コストでエネルギー分解能の良いRIビームを生成することができ、低エネルギー不安定核反応の研究や物質へのRI照射による応用研究等への利用が期待できる。昨年度に引き続き、イオン源開発をおこない、さらにRI生成ガス標的の開発を行った。 タンデム加速器に入射するイオンは負イオンでなければならず、本研究ではRI(11C, 14C, 3H 等)をガス分子(CO2 や H2 等)の形で負イオン源に注入する方式を検討した。ガス注入可能な負イオン源として、RF・荷電交換イオン源を用いた。今回は非放射性のガスを注入して、C-, H- イオンの引き出しテストを行い最大電流を測定した。二酸化炭素ガス注入により引き出した C- にたいして 270 nA、水素ガス注入により引き出したH-にたいして 80 nA という結果が得られた。今回用いたイオン分析系のイオン透過効率が15%と低かったが、これを100%近くに向上させることは容易であり、C- については目標である1μA が達成できる見込みである。 次に窒素(90%)と酸素(10%)の混合ガス1気圧を封入したガス標的管を作成し、10 MeV 陽子を照射して 14N(p,α)11C 反応による11C生成テストを行った。ガス中に半導体検出器を置くことにより11C生成の確認と生成量の測定をすることに成功した。 これらの結果から、将来、本手法で得られる11Cビーム強度は数100個/秒程度と見積もられた。ガス中のRI分子濃度を増加させる改良により、10000個/秒程度まで増強できる可能性がある。寿命の長い14C, 3H に対してはさらに何桁か高いビーム強度が期待できる。全体として、本手法は十分実現可能であることが示された。
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