研究課題/領域番号 |
24510126
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
渡辺 一弘 創価大学, 工学部, 教授 (40240478)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 量子ビーム産業応用 |
研究概要 |
本研究ではフェムト秒レーザによる内部加工及び穿孔加工を利用することによって通信用光ファイバに対してセンシング機能を埋め込むことを目的としている。内部に造り込む空孔配列とセンサ感度の関係を明らかにする。また、穿孔加工によるセンサでは、穿孔の配列及び蒸着する金属薄膜の条件がセンサの性能に与える影響について明らかにする。 【空孔配列タイプ:屈曲センサ】シングルモード光ファイバ(コア径:9µm)に対してフェムト秒レーザー内部空孔加工により、光損失を制御し、屈曲検知機能を実現した。センサ部には、空孔化領域から成る内部構造体を有しており、その空孔の配列方法(挿入長、挿入損失、空孔の配列間隔、空孔の埋め込み深さ等)を調整することによって、屈曲時のセンサ感度(dB/mm)や感度特性に変調を与えることが可能であることが確認された。またFDMソルバーを用いた数値解析によって、理論モデルを構築し、実験結果に非常に近い解析モデルの条件を明らかにすることができた。 【穿孔加工タイプ:プラズモンセンサ】フェムト秒レーザーによる穿孔加工によって、マルチモード光ファイバ(コア径:62.5µm)のコアに到達する微小な穴配列を作製し、内部に金属薄膜を形成しすることにより、穴先端の金属薄膜がコア内部の伝搬光と相互作用するようなセンサ部を作製した。これまでに、短波長側(450nm付近)でプラズモンを励起共鳴波長のようなSPRカーブを確認した。またシングルモード光ファイバ(9µm)に対して4方向から内部加工をすることで、透過光の散乱帯を作り込み、ここに金属薄膜を施した。長波長(1100-1200nm帯)において空気中と水中におけるスペクトル計測の結果に差異を確認し、明らかに金属表面の屈折率変化による光強度の変化を確認した。このことから、液体の判別が可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画にそって実施されている。実験は光ファイバ―という細く機械的に脆弱な素材に光加工を行うという点で、位置決め、照射条件が微細になり、根気が必要であるが、概ね良好な再現性を確立できている。実験データの精度を確保するためには、多くの光ファイバー試料を使う必要があるが、予定の予算で十分に準備できている。高強度レーザでガラス材料に空孔をつくるための理論検討にも着手したり、また、コア近傍の光分布を計算し、センサとして必要な損失過程を理論的に予想できるので今後の実験との比較により実験を先導できる可能性も見出した。穿孔の製作も順調で、穿孔内での局所的プラズモン現象と思われる実験結果も得ているので、今後の展開に期待している。
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今後の研究の推進方策 |
【空孔配列によるセンサ応答の最適化】 提案センサは空孔配列によりコア内の伝送光の散乱が変化することが予想される。配列を直線的配列以外にコア近傍円周状、スパイラル等に配列する実験を行う。また、コアークラッド境界から、コア領域に浸透するように空孔を配置することによる、挿入損失、曲げに対する損失変化を計測し、センサー機能としての評価を行いたい。一連の実験により効率的な散乱を発生させセンサ応答の最適化を試みる。このとき、直線的に空孔を配列した場合の結果を参考に配列長も含めた検討を行う。 【Au薄膜の膜厚によるセンサ機能の最適化】 プラズモン効果は金属薄膜の膜厚によりそのスペクトル強度が異なることが知られている。最適な膜厚を得るために膜厚の異なるセンサを作成しセンサ応答を確認していく。形態1として、空孔配列によりクラッド層に散乱させて、クラッド表面におけるプラズモン効果を検証する。この場合、シングルモードファイバで実験を行う。形態2として、穿孔をクラッド表面から、コア境界領域まで作成し、その内部に金属薄膜を形成し、局在プラズモンの検出メカニズムが生じるかを実験的に明らかにする。その傾向は昨年度の実験から手掛かりを得ているが、さらなる実験的な再現性と確証を得るまで、実験をする必要がある。プラズモン共鳴波長は、透過入射角と金属の誘電関数によるが、Au以外に、Au/Taをまず使ってみる。Ag,Ptなども興味深いが、高周波蒸着器内部の状態を保つためにはあまり異種金属のターゲットにかえてしまうのは得策ではないので、慎重に行う必要がある。 高強度フェムト秒レーザの光場でどのような現象が起こっているのかを検討するために、レーザ誘導昇華現象を理論的に計算する研究者を研究協力者として招聘し、空孔内部の物質、空孔内表面の物質について検討を行う。集光条件と空孔形状の比較は興味深い研究となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品は昨年度全て購入済みで、当初の計画通り実験を遂行する上で効果的に用いられている。25年度は、光ファイバーパッチコード、素線、光部品、光源などを購入し実験を効率的に、かつ測定確度を高めて進めてゆく。また、フェムト秒レーザによる微細加工の様子を理論解析している研究者と交流を結ぶことができたので、本年度は日本に研究協力者として招聘して、理論的研究を導入し、レーザ誘起加工の実験結果と比較研究を行うこととなった。そのための招聘交通費、日当、宿泊費を支出したい。さらに、光ファイバー内での電磁界分布を計算するための有限差分、有限要素法の計算ソフトウェアをアップグレードする。
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