研究課題/領域番号 |
24510126
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
渡辺 一弘 創価大学, 工学部, 教授 (40240478)
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キーワード | 量子ビーム産業応用 / フェムト秒レーザ加工 / 光ファイバセンサ |
研究概要 |
【目的】本研究ではフェムト秒レーザによる内部加工及び穿孔加工を利用することによって通信用光ファイバに対してセンシング機能を埋め込 むことを目的としている。内部に造り込む空孔配列とセンサ感度の関係を明らかにする。また、穿孔加工によるセンサでは、穿孔の配列及び蒸着する金属薄膜の条件がセンサの性能に与える影響について明らかにする。 【空孔配列タイプ:屈曲センサ】フェムト秒レーザーを用いて、レーザの照射条件を調節し、シングルモード光ファイバに対して 内部空孔加工により屈曲検知機能が可能となった。センサ部の空孔化領域では加工による内部構造体を有しており、その空孔の配列方法(挿 入長、挿入損失、空孔の配列間隔、空孔の埋め込み深さ等)を調整することによって、屈曲時のセンサ感度(dB/mm)が変化することが明らかとなった。また、屈曲の方向も検知可能となった。また有限要素法FEMを用いた数値解析によって、理論モデルを構築し、実験結果に非常 に近い解析モデルの条件を明らかにすることができた。 【穿孔加工タイプ】第2高調波400nmフェムト秒レーザーによる穿孔加工によって、マルチモード光ファイバのコアに到達する微小な穴配列を作製し、内部に金属薄膜を形成しすることにより、穴先端の金属薄膜がコア内部の伝搬光と相互 作用するようなセンサ部を作製した。これまでに、短波長側(450nm付近)でプラズモンを励起共鳴波長のようなSPRカーブを確認したが、相互作用長が不十分であることから、さらに継続的な実験が必要である。実験の過程で貫通穴を加工した結果、光ファイバー内に分光機能を付与できることが新規に明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画にそって実施されている。本研究では細く機械的に脆弱な素材な光ファイバ―に光微細加工を行うので精密な位置決めや照射条件の制御が必要であるが、これまでの研究でかなり精度の高い加工実績が積み上げられた。その結果、光ファイバ円筒の対向方向から精密な位置で加工することも可能となり、再現性よく貫通穴が可能となった。この結果当初は考えていなかった微小分光器を光ファイバー線路内に構成できることが発見された。高強度レーザでガラス材料に空孔をつくるための多光子吸収プラズマ生成理論の導入や、コア近傍の電磁界分布による伝播光の損失過程の予測などの理論的研究も進展した。穿孔の製作も順調で、穿孔内での局所的プラズモン現象と思われる実験結果も得ているので、今後の展開に期待している。
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今後の研究の推進方策 |
【空孔配列によるセンサ応答の最適化】 提案センサは空孔配列によりコア内の伝送光のレーリー散乱損失が変化するので、継続的に配列を変化する実験を行う。また、コアークラッド境界から、コア領域に浸透するように空 孔を配置することによる、挿入損失、曲げに対する損失変化を継続的に計測し、センサー機能としての評価をつづける。一連の実験により効率的な散乱を発生させセンサ応答の最適化を試みる。【Auコロイド付着によるセンサ機能】 表面プラズモン効果は金属薄膜が必要であるが、その生成が困難な場合、金属コロイドの付着を利用して局在プラズモンを生成する方式も実施する。ヘテロコア構造を用いて光ファイバクラッド表面に相互作用領域をつくり、表面に金属コロイドを付着する方式、もしくは穿孔または貫通穴内表面にコロイドを付着する方式を実験的に検討したい。さらに、研究過程で新規に発見した貫通穴による分光機能に関する実験を発展させる。この方式は特許性もあり、ピコリッタという微小試料容積で、光ファイバー線路中に微小分光器を作り込める大きな利点を有している。 高強度フェムト秒レーザの光場による多光子吸収プラズマ生成の理論敵検討、有限要素法による損失計算、コロイドによる局在プラズモンの理論計算など理論的側面の進展も計りたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費および物品費が予定より少なかった。 研究目的遂行のため、光ファイバ試料、光学機材、旅費などに使用する。
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