研究課題
伝導電子のガラス的凍結状態が期待されるYBaCo2O5に対して中性子PDF解析法を用いて電子のガラス的凍結に伴う局所構造歪みを観測し、電子の短距離配列を決定した。YBaCo2O5では約330K以上での高温正方晶相、220K~330Kでの反強磁性秩序を持つ中間斜方晶相、220K以下での反強磁性秩序および電荷秩序をもつ低温斜方晶相が存在する。このうち高温正方晶相と中間斜方晶相ではすべてのCoサイトが結晶学的に等価で+2.5の価数をもつので金属的な伝導が期待されるが、実際には非金属的な伝導を示す。このことから高温正方晶相および中間斜方晶相では伝導電子がいわばガラス的に凍結した、短距離秩序状態をとっていることが期待される。そこで我々は高温正方晶相において粉末中性子回折実験を行い、得られたデータを原子対相関関数(PDF)に変換し、局所構造解析を行った。その結果、高温正方晶相でも低温斜方晶相と類似した局所構造歪みが存在することがわかった。このことからYBaCo2O5の高温正方晶相では低温斜方晶と同様に非等価なCo2+、Co3+サイトが存在し、低温斜方晶と同様の電子配列が短距離周期で存在することが明らかになった。研究期間全体を通じて、LiMn2O4およびYBaCo2O5において電子の短距離秩序に伴う局所構造歪みを観測し、さらに電子の短距離配列を決定することに成功した。これらの結果から遷移金属サイトが半整数の価数を持つにもかかわらず非金属的な電気伝導性を示す物質系においては、伝導電子が短距離秩序しか持つことができずに凍結している、いわば電子のガラス的状態が存在することを明らかにすることができた。しかしこのような電子のガラス的状態が生じるメカニズムを明らかにすることはできず、そのためにはさらに観測例を増やしてそれぞれに共通する性質を抽出する必要がある。
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