研究課題
オークリッジ国立研究所の研究用原子炉に原子力機構が設置した広角中性子回折装置(WAND)を改良した。具体的には、不要なバックグラウンドを低減させる回転型のコリメーターを新たに開発してWANDに設置した。また、検出器周囲の遮蔽体を改良して、より広い立体角から散乱が得られる状態にした。以上の結果、これまで存在していた不要なバックグラウンドがカットされて、極めて微弱な散乱でも検出が可能になった。SN比において一桁以上の向上が見られた。この改良型WANDを用いて、本研究により新たに開発した高分子とブルシアンブルーを複合させた新材料(ナノプルシアンブルー)の中性子回折と中性子散乱を測定した。得られた測定結果から、水分子のクラスターの状態、プルシアンブルーの結晶の構造と大きさ、プルシアンブルーに結合される金属イオンの状態等を明らかにした。これらの状態の理解に基づいて、水中の放射性セシウム等が高分子複合体に吸着・捕捉される過程を明らかにするとともに、高分子とブルシアンブルーの原料比等を最適化する等の改良を実施して、最適化されたナノプルシアンブルーを設計した。本研究で得られた新材料は水中の放射性セシウムを高い効率で吸着することに加えて原料が安価で処理が容易である。そこで本新材料の製造原理に関する特許を出願した。福島復興事業協同組合等の企業に本材料の機能と製造に関する技術情報を提供するとともに、企業と共同で福島県の試験場にて本材料の機能データを取得するとともに除染事業等を実施した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件)
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