研究課題/領域番号 |
24510132
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
長澤 尚胤 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (00370437)
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キーワード | 天然高分子 / 多糖類 / ポリ乳酸 / 架橋 / 放射線加工 / 微小ゲル / グラフト重合 |
研究概要 |
石油合成系高分子の利用・廃棄による環境破壊という負の側面に対処すべく環境に負荷を与えない天然高分子やバイオプラスチックの利用が期待されるが、汎用高分子と比較して諸物性が劣っている点がある。γ線や電子線といった量子ビームの照射による分子間で橋かけ(架橋)反応や表面グラフト重合技術を利用した微小ゲル作製並びに得られた微小ゲルのバイオプラスチックへの均一なナノ分散を行うことにより、地球環境保全のために、汎用しやすい耐熱性、機械的特性の優れた新しい生分解性ナノコンポジット材料を創製する。 本年度は、昨年度に作製した高分子微小ゲルに、放射線グラフト重合しやすいビニル系モノマーであるスチレンを放射線グラフト重合した。約500 nmを有するカルボキシメチルセルロースゲル基材に、1%スチレンモノマー/メタノール溶液に浸漬してγ線照射して、グラフト重合時間を12時間で変化させ、1μmから10μm以上のスチレングラフト化したゲル材を見出した。室温から500℃までの熱分解(TGA)測定により、高分子微小ゲルとグラフト鎖の熱分解温度及び重量変化の差から表面改質高分子微小ゲルのグラフト率は約20%~200%に見積もることができた。ヘキサフロロイソプロパノールに溶かしたポリアミド11に浸漬してキャストフィルムを作製し、目視にて相容性を確認したが、グラフト重合による改質前後では、改質後は相分離が抑えられる傾向であった。以上のことから、量子ビームを駆使して、表面をグラフト重合で改質した微小高分子基材を作製できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
約500 nmを有するカルボキシメチルセルロースゲル基材に、γ線照射してスチレングラフト化する技術を見出した。室温から500℃までの熱分解(TGA)測定により、高分子微小ゲルとグラフト鎖の熱分解温度及び重量変化の差から表面改質高分子微小ゲルのグラフト率は約20%~200%に見積もることができた。しかしながら、スチレンホモポリマーの除去が困難であったが、ヘキサフロロイソプロパノールで洗浄することにより分離することができた。
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今後の研究の推進方策 |
表面改質高分子微小ゲルとバイオプラスチックであるポリ乳酸やポリアミド11とをラボプラストミルで溶融ブレンドし、プレス機にてフィルム状に成形する。ポリ乳酸と高分子ナノ粒子との相溶性並びに分散性についてTEMを用いて評価し、アルカリ処理や酵素分解を行った系と比較してバイオプラスチック鎖と表面改質高分子微小ゲルとの相溶性と分散性との関連を明らかにする。ナノコンポジットフィルムの力学的特性については引張試験、熱的特性として熱変形性については室温からポリ乳酸の融点以上である200℃までの温度領域での熱機械特性(TMA)測定等によって評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた学会等への出張に行かなかったり、依頼分析を予定していた試料については装置メーカーのご厚意により貸出して頂いたデモ機を利用して測定できたりしたため。 微小高分子ゲルの分離にフィルターや溶媒を大量に使用することになるので、フィルターカートリッジや洗浄用有機溶媒の購入に充てる。
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