最終年度は、測定データからのH+レートの計算方法を改良し、シミュレーション計算を行い、エネルギー分布、角度分布の比較、またH+/H-比の真空度からの見積もりと比較を行った。シミュレーション計算とH+レート計算の改良は連携研究員Konstantinovaを中心に行った。TIPP2014会議において本研究についてKonstantinovaが発表を行った。 全体の研究として、平成24年から平成5月まで、系統的なビーム損失陽子飛跡の測定実験を行った。実験開始前に、検出器の測定角度、位置を遠隔で制御するための架台移動装置を製作し、ビーム計数、トリガー計数を自動計測するための測定器を購入し、計測の比較的な効率化を達成した。さらにシンチレーションファイバー2面を製作し、既存の6面と合わせた全7面により(1面は読み出し回路が不足しているため未使用)、陽子飛跡の水平方向、垂直方向の位置と角度を計測することができるようになった。 実験においては、上流側検出器のビーム軸に関する水平位置0-400mm、下流側検出器の水平位置0-600mmにおける測定を行った。まず、荷電粒子の証拠となる、信号を検出したファイバーの位置が全7面で直線状に並ぶ飛跡を観測した。さらに上流と下流で検出された信号の時間差(飛行時間)から、これらの荷電粒子が陽子と無矛盾であることがわかった。 さらに詳細な解析により、飛跡のビーム軸に関する角度分布が5-6度を中心とするがガウシアン状分布をしており、エネルギーが70-110MeVであることがわかった。これらはいずれもシミュレーション結果と一致している。 また、H+/H-の比が1e-8オーダーであることがわかり、これはビームパイプの真空度から見積もったH+生成レートの見積もりと一致した。 以上より、本研究でビームロスによる陽子の絶対レートが測定できることを示した。
|