研究課題/領域番号 |
24510138
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
菅野 公二 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20372568)
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キーワード | 表面増強ラマン分光 / ナノ粒子 / プラズモン共鳴 / セルフアセンブル / 単分子 |
研究概要 |
平成25年度は,ナノギャップにおける電磁場増強理論を基本とした表面増強ラマン分光(SERS)増強メカニズムの理解と最適構造導出,および超高感度検出への応用に関する研究を行った。本研究課題では,ナノ粒子間の電磁場増強理論を基本として,SERS増強メカニズムの理解を進めている。粒子間ナノギャップの局在プラズモン共鳴(LSP)によるSERS増強度はナノ粒子のサイズ,ナノ粒子二量体連結方向,二量体間隔に大きく依存すると考えられる。平成25年度は,①上記のパラメータを変化させたナノ粒子二量体配列構造の電磁場解析とSERS分析実験により,それらの影響を明らかにし,最適構造を導出するとともに,②それを用いた農薬成分分子のpMレベルの超高感度検出を実現した。 ①ナノ粒子二量体配列構造の電磁場解析とSERS分析実験 ナノ粒子のサイズ,ナノ粒子二量体連結方向,二量体間隔をパラメータとし,解析および実験の両面からそれらのSERS信号強度への影響を明らかにした。サイズに関しては,ナノ粒子密度との関係から100nmの粒子径が最適であることを明らかにした。また,連結方向依存性を実験的に調べ,電磁場解析結果との比較から,電磁場増強が支配的であり,一方向に配列した構造が適していることを明らかにした。さらに,ナノ粒子二量体間隔には最適値があることを初めて明らかにした。二量体において発生した双極子が作る電磁波が隣り合う二量体へ及ぼす影響を解析し,その影響による現象であることを明らかにした。これらの結果から最適な配列構造を導出するとともに,増強メカニズムに理解を進めることができた。 ②最適配列構造を用いた高感度分子検出 実験的・解析的に導出した最適配列構造を用いて,農薬成分分子の一つである4,4’-ビピリジンのSERS分析を行った。その結果,検出限界濃度は10pMであり,高感度検出が可能であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
単分子感度の表面増強ラマン分光(SERS)化学分析を発展させるために,(1)巨大なSERS増強を生み出すナノ粒子二量体アレイの高効率生成基盤技術(単分子感度SERS分析プラットフォーム)を確立するとともに,(2)ナノ粒子二量体構造の電場増強およびラマン光増強の効率的な特性評価を行うことによって,SERSのメカニズム解明および単分子超高感度化学分析を目的としている。平成24年度の高収率ナノ粒子二量体アレイ配列技術の構築に続いて,平成25年度に実施予定としていた最適ナノ粒子配列構造の導出とそのメカニズム解明を順調に達成した。さらに,平成26年度に計画していた超高感度化学分析のためのSERS分析に関して,農薬成分分子のpMレベルの検出を実現した。これは単分子レベルの検出感度と考えられる。さらに,ナノ/マイクロ流路中にナノ粒子配列を作製する技術を構築し,より効率的なメカニズム解明および単分子感度分析検証が可能となった。これらの結果から,平成26年度には単分子感度の実験的検証および理論的考察によるメカニズム解明,さらに他分子の分析・多成分分析,に関する研究を当初の計画より進展させることができると考えられる。そのため,現状では当初の計画以上に研究が進展したと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,計画通り,単分子感度の実験的検証および理論的考察によるメカニズム解明,さらに他分子の分析・多成分分析を行う。平成25年度までに構築した高収率配列技術および最適ナノ粒子二量体配列構造を用いて以下の2点を実施する。 (1)単分子感度の実験的検証および理論的考察によるメカニズム解明 これまでに明らかにした最適構造を用いて,分子濃度や二量体密度をパラメータとしてSERS分析特性を評価する。電場増強理論を基本としつつ,解析結果との比較を行い,粒子形状やサイズに関する考察によりメカニズム解明と単分子感度分析の検証を行う。 (2)各種分子の分析と多成分分析への応用 上記の研究を基盤として,様々な農薬成分分子の分析とそれらを含む多成分分析への応用を進める。 以上の結果から,最終年度として,単分子感度分析の実験的実証とメカニズム解明,およびその応用による有用性をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度における研究では,綿密な事前設計・数値計算およびこれまでの申請者の知見により効率的な研究を行うことができたため,消耗品費を最小限に抑えることができたため。 平成26年度には,平成25年度に構築した技術を用いて提案する効率的な単分子SERS分析の特徴を活かした大量なデータ取得および解析を行う計画であり,予算を少々繰り越してそれを消耗品費に充当することで予定よりも多くの実験を行い,より有用なデータ数および成果を得られると考えている。また,順調に研究を進められているため,予定よりも多くの成果報告を行う計画であり,そのための費用に使用する。
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