研究課題/領域番号 |
24510140
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
佐竹 彰治 東京理科大学, 理学部, 准教授 (00277831)
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キーワード | ポルフィリン / マクロサイクル / ビピリジン / ナノポア |
研究概要 |
本研究では金属錯体と基質を同時に内包できる剛直なポルフィリンナノポアを構築し、その内部空間における錯体触媒反応を調べることを目的としている。その鍵となる分子の1つが、3つの金属ポルフィリンと3つの2,2'-ビピリジンが交互に連結することによって形成されるユニークなポルフィリン環状三量体であり、その効率的合成とその内部に金属錯体を導入することによって特異的な機能開拓を行うことを第1の目標としている。昨年度、目的のポルフィリン環状三量体を少量得ることに成功したが、収率にバラツキが多く再現性が低いことが問題であった。またゲルろ過クロマトグラフィーを用いた単離精製法も煩雑で、繰り返し精製を行う必要があった。そこで本年度はポルフィリン環状三量体を再現性よく合成するためにニッケル錯体の調整法と後処理法を詳細に検討したところ、ニッケル錯体を20当量用い、後処理法ではクエン酸処理をおこなうと再現性よく目的物を含む混合物を得ることに成功した。また反応混合物の単離精製法として、高機能シリカゲルカラムを用いることによって、環状三量体と環状四量体を選択的に分離することに成功した。その結果、高純度の環状三量体を従来に比べて簡便に単離することができるようになった。また、第2の目標であるピリジニルピラゾール基を有するポルフィリンナノポアの構築研究では、ボロン酸エステルを有するイミダゾリルポルフィリンとジブロモポルフィリンのパラジウム錯体を用いた鈴木‐宮浦カップリングによりクロスカップリング反応を行い、ピリジニルピラゾールを有するトリスポルフィリンの合成に成功した。これをクロロホルム-メタノール混合溶媒中で自己組織化後、オレフィンメタセシス反応を行うことによって、目的とするピリジニルピラゾール基をリング内部に向けたポルフィリンナノリングの合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は目的のポルフィリン環状三量体を再現性よく合成するための方法を確立し、高機能シリカゲルカラムを用いた分離法の発見により、混合物の中から目的物を効率よく単離する方法を発展させた。この成果は今後の錯体合成にとってなくてはならない重要なステップでり、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
合成に関しては、いまだ100mgスケールでの合成には至っておらず、錯体触媒の反応開発に重心を移すには合成法においてさらなる改良が検討が必要であると考えている。そのために鍵反応である還元的ホモカップリング反応を再検討する。具体的はNiを触媒量とし、有機金属試薬を用いた金属交換反応によって、還元的カップリングを検討する。また、パラジウムとジスタナン化合物を用いた還元的カップリングも検討する。 一方、少量得られた環状三量を用いて錯体合成を行い、内部に複数の金属が導入されることを実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
アルバイト謝金として確保しておいた予算が、アルバイト予定者の都合で執行できなかった。 次年度消耗品等で執行する。
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