様々な金属ナノ粒子についてタンパク質の結晶の核形成の促進効果を探索した結果、Ptナノ粒子が核形成促進することを見出した。Ptナノ粒子の集積化と核形成促進のメカニズムを解明するために動的光散乱を計測した。その結果、Ptナノ粒子とリゾチーム分子が複合体を形成していることが明らかになった。Ptナノ粒子の周囲にリゾチーム分子の高濃度の領域が形成され、結晶核形成が促進されたと考えられる。またゼータ電位を計測した結果、Ptナノ粒子のみでは1mV、リゾチーム分子のみでは6mVであるのに対し、Ptナノ粒子とリゾチーム分子の複合体は2.5mVであることがわかった。複合体形成により、高い表面電位を持つリゾチームの表面電位が低下し、リゾチーム分子同士の反発が抑制され結晶核形成が促進されたと考えられる。 さらに光学顕微鏡を用いて、金属ナノ粒子の集積化ダイナミクスを調べるシステムを作製した。まず結晶化過程全体(数日間)を一定温度条件で観察ができる顕微鏡システムを作製した。またガラス表面上の金ナノ粒子に対して、単一金ナノ粒子からの表面プラズモン散乱の検出を行うことにより単一ナノ粒子検出可能な顕微鏡を構築した。さらに蛍光ナノ粒子に対して単一蛍光ナノ粒子からの蛍光検出が可能な蛍光顕微鏡も構築した。 またPtナノ粒子を集積化したタンパク質結晶(カラークリスタル)を利用してPtナノ粒子の集積化のメカニズムを解明した。まずpH4前後で、1mVと-3 mVのPtナノ粒子を作成し、それぞれPtおよびPt'ナノ粒子とした。これらのナノ粒子のリゾチーム結晶への集積化効率を測定した結果、Ptナノ粒子は結晶に集積化しやすく、Pt'ナノ粒子は集積化しにくいことがわかった。PtおよびPt'ナノ粒子の集積化ダイナミクスはナノ粒子、リゾチーム、Naイオン、Clイオンの相互作用で説明できることがわかった。
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