遷移金属窒化物であるCrNおよびMnNをCu(001)表面上に単原子層だけ成長させ、それらのナノ構造パターンの成長様式ならびに電子状態・磁性を、走査トンネル顕微鏡(STM)、X線光電子分光(XPS)、角度分解光電子分光(ARPES)およびX線吸収分光(XAS)を用いて明らかにした。平成24年度に所属機関が変更となったため、CrN/Cuについては前所属機関との共同研究を、MnN/Cuについては高エネルギー加速器研究機構での放射光共同利用研究を行った。現所属機関においては、これらの窒化物を成長可能な超高真空装置の整備を行った。 CrN/Cu表面においては、MnN/Cuと同様にCrNのナノ構造パターンが成長することがわかったが、下地との格子整合条件がMnNとは異なるために、MnNの場合とは異なるパターンも現れることを明らかにした。 MnN/Cu表面は、磁気円二色性実験から、極低温(5K)でも強磁性秩序を持たず、一方で入射直線偏光依存性がXASスペクトルに見られることから反強磁性である可能性が示唆されていた。本研究では平成25・26年度にバルクMnNのネール温度(650K)付近まで昇温してXAS測定を行ったが入射偏光依存性は温度変化しなかったことから、この偏光依存性はMnNが2次元単原子層膜であることに起因することが明らかとなった。一方いくつかの光電子分光測定からはMnに磁気モーメントが残っているものの、過去に強磁性が示唆されているMnCu表面合金に比べてMn 3d電子の遍歴性が高いことが明らかとなった。現在これらの結果をまとめて論文化の作業を行っている。
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