研究課題/領域番号 |
24510147
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
廣瀬 文彦 山形大学, 理工学研究科, 教授 (50372339)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
原料ガスの吸着および酸化をコンピュータ制御で高精度に行える室温原子層堆積装置の開発を行った。原料として有機シリコン、有機チタン、有機アミノハフニウムを用いて試験を行った。これら分子を室温で吸着させるために、人工吸着サイトを形成するためのOHラジカル源を準備し、反応素過程を原子レベルで観察が可能な多重内部反射赤外吸収分光法をもちいて評価を行った。その結果、次の点が明らかになった。 (1)高密度OHラジカル源の性能評価 水蒸気を誘導性コイルで直接プラズマ化させて、SiO2表面、TiO2表面、HfO2表面上に照射する試験を行った。その結果、全表面において、分子層一層で吸着した有機物を完全酸化できることを明らかにし、その完全酸化条件を明らかにすることができた。さらにSiO2表面では、表面のハイドロキシル化が強く起こるのに対して、TiO2およびHfO2表面においては、酸化した金属水素結合が表層に現れ、これが原料ガスの吸着サイトになっている可能性を見出した。 (2)室温TiO2の原子層堆積法の開発 上記の試験結果を元に、原料ガスにテトラエチルアミノチタンを用いて、室温での原子層堆積法を開発した。成膜速度として、0.15nm/cycleを記録した。原料ガスの吸着サイトとして、Ti-OHだけではなく、酸化したTi-Hも働くことを明らかにした。 (3)有機アミノハフニウム吸着とラジカル酸化機構の評価 High-k絶縁膜形成材料として、蒸発制御性に優れるテトラキスエチルメチルアミノハフニウム(TEMAH)を用い、多重内部反射赤外吸収分光を用いて原料分子の飽和吸着密度を評価した。TEMAHにおいても、室温で吸着および酸化することを明らかにした。飽和曲線と酸化曲線を取得し、原子層堆積法プロセスの条件を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
設定した課題についてほぼ完全に遂行している。 TiO2については、予想外に速くプロセス条件を確立することができた。今後HfO2-ALDについて成膜試験を重ね、MOSデバイスへの適用性の試験に移っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、完成した室温ALDプロセスを用いて、成膜試験による実証と、ALD全体での一連の素反応の評価を行い、ALD成膜のプロセスの完全解明を狙う。具体的には次の内容を実施する。 (1)High-kALD反応素過程のin-situ観察 酸化剤としてOHラジカル照射を試み、表面の有機アミノ構造がどのように酸化されるのか、またlayer-by-layerで酸化が進むのか、あるいはバックボンド酸化が行われるかなどの、原子レベルでのラジカル酸化機構を、多重内部反射赤外吸収分光測定から明らかにする。また、オゾン酸化試験も別途行い、OHラジカルとオゾンラジカルでの表面反応の差から、どのようにすれば表面の再配列、あるいはマイグレーションを促進できるのかアイデアを抽出する。酸化過程での原子構造変化は、多重内部反射赤外吸収分光とGaussianの解析で明らかにしていく。 (2)室温ALD試験とMOSデバイスの作製 上記成果に基づき、ALDプロセスの条件を決定し、実際のDRAMを想定して数nm程度の絶縁膜を形成し、1回あたりの成膜量や、デジタル的に成膜が進むのかを確認し、ALDモードになっていることを明らかにする。成膜の不純物分析を行い、ラジカル励起法での反応の残物の評価を行い、不純物を低減する方法についても考察を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
およそ70万円を成膜試験に伴う材料および真空消耗部品に当てる予定である。 そのほか、成果公開として米国電気化学会での発表と応用物理学会での発表のために、旅費として50万円を予定している。そのほかの費用として、学会参加費や論文掲載費などに10万円を予定している。
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