研究課題/領域番号 |
24510147
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
廣瀬 文彦 山形大学, 理工学研究科, 教授 (50372339)
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キーワード | 原子層堆積法 / 酸化膜 / プラズマ / 室温 / 国際情報交換 |
研究概要 |
次世代の原子スケールでの半導体デバイスを実現するために、サーマルバジェットを極限まで抑えたHigh-k絶縁膜の室温原子層堆積法を構築することを目的に、これまでTiO2の室温原子層堆積に成功し、本年度ではHfO2の室温化を試みた。前年度に構築した、表面化学反応のその場観察法である多重内部反射赤外吸収分光を用い、HfO2の原子層堆積の主要反応である、原料ガスの吸着過程、さらに酸化ガスによる表面酸化過程の観察を行った。その結果、次のことを明らかにすることができた。 1.有機ハフニウム原料の室温吸着の実証 有機ハフニウム原料として、テトラキスメチルエチルアミノハフニウムを用い、SiO2およびHfO2表面への室温吸着試験を行ったところ、該原料分子は表面のハイドロキシル基を介して吸着することを明らかにした。この実験により原料分子の飽和照射条件を明らかにすることができた。 2.有機ハフニウム吸着表面の酸化過程の評価 酸化剤として、加湿アルゴンプラズマによる表面酸化試験を行った結果、有機ハフニウム中のメチル基、エチル基を酸化せしめ、除去する効果はあるものの、原子層堆積反応を進行させるのに不可欠なハイドロキシル基を表面に再生するのが困難であることが分かった。その後、酸化種の探索を行った結果、加湿アルゴンではなく、加湿酸素によるプラズマが、酸化およびハイドキシル基形成に有効であることを明らかにした。 3.酸化ハフニウムの室温原子層堆積法の実証 上記評価結果を基に、プロセス設計を行い、室温堆積試験を行った結果、室温でSi基板上に酸化ハフニウムを形成することに成功した。成膜速度として0.26nm/cycleを記録した。酸化ハフニウムの形成はX線光電子分光で明らかにした。一方、不純物としてNとCの混入が見られ、これを抑制する必要があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画していた酸化ハフニウムの室温形成に2年目で成功し、さらに研究を前倒しを行い、膜質の高品質化とデバイス応用の試験に進めている。研究は予想以上のペースで進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
high-k絶縁膜としてのHfO2膜の室温堆積に成功しているが、品質に難があり、膜質向上試験を実施する。その成果として、これまで室温でのMOS形成が困難であったGe上のHfO2-MOSの室温堆積を実施する。得られた成果をまとめ、アトムプログラミングの概念設計を進める。具体的に行う内容は次のとおりである。 1.HfO2-MOSキャパシターの電気特性実証・GeMOSキャパシターの挑戦的試作 MOSを試作し、C-V評価から誘電率を明らかにするとともに、界面準位密度を評価する。さらに室温でhigh-k膜を形成できるメリットを活用し、界面偏析を抑えたGeMOSキャパシターの試作を試み、その工業的な有用性を実証する。 2.自己増殖LSIのアイデア抽出 ラジカル励起法によって作り出される室温での薄膜成長技術とナノアトムプログラミングとしての表面修飾法を活用した、自己増殖LSIのアイデアを抽出する。 3.成果公開 上記結果をALD技術と半導体デバイスの分野の両方をスコープとしてもつElectrochemical Society(ECS)で発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究が予想より効率的に進んでいるため。 持ち越した予算を用いて、次年度はさらに成果の拡大を狙う。 膜質向上のための成膜試験材料費と、成果公開のための学会参加旅費に使用する。
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