研究課題/領域番号 |
24510150
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 啓文 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90373191)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ポリ酸 / POM / ノイズ源 / カーボンナノチューブネットワーク / 負性抵抗 |
研究概要 |
今年度は単層カーボンナノチューブ(SWNT)およびグラフェンナノリボン(GNR)と分子ナノ粒子複合体を作製し、電気測定を行った。このうちSWNTに関して多くの成果を得た。特にポリ酸(POM)ナノ粒子を1本のSWNTに吸着させ電気特性を測定したところ、①ナノ粒子の大きさにより整流方向が逆転するという現象を見出した。また、②I-V曲線には条件によっては負性抵抗性が確認された。 ナノ粒子の大きさによって整流方向が逆転する理由を見出すためにケルビンプローブAFMにてPOM/SWNTの表面ポテンシャルを測定したところ、粒子の大きさが変化するにつれSWNTとPOM間のポテンシャルも逆転することが確認された。POMとSWNT界面ではPOM粒子の大きさにより電化移動する方向が逆になることから整流方向の逆転現象が起きると考えられる。 負性抵抗は必ず大気下で観察され、酸素下、真空下では確認されなかったので水蒸気の吸着による影響であると考えられる。つまり、水分が電流と干渉してポリ酸(POM)の還元を促したためと考えられる。負性抵抗が観察されたため、この系をネットワーク化すると発振デバイスが得られるのではないかと推察され、実際にネットワークを作製し電流測定を行った。すると入力バイアスを増加させるに従い、ノイズ幅が増加することが確認した。このようなSWNTネットワークがノイズ源として利用できることは確率共鳴素子などいろいろな応用が考えられ興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はSWNTおよびGNRに吸着するナノ粒子がいかに電気特性に影響を与えるかを調べるものである。本年はPOMがSWNTに非常に大きく影響を与えることを見出した。ノイズ源として利用できることを発見したりするなど非常に予期せぬ成果も得た。このことから研究はおおむね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず予定していたHAT分子の合成およびそれをSWNTおよびGNRに吸着させた複合体の電気測定を行う予定である。また、GNRのクロスバー構造の電気特性についても測定を行うことにしている。POMについては吸着量を変更するために合成的手法によりアンカーリンクをつける予定で、先端にピレンを付与することでSWNTやGNRのπ電子と相互作用でき吸着しやすくなると思われる。実際にPOMの大きな結晶ではNDRがみられないことから、粒子の大きさを制御することが非常に重要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費 1000千円 ピエゾ制御システムの購入を予定している。POMの研究を先行したために当該制御器を用いる実験と順序を入れかえたため次年度に繰り越すこととなった。 旅費 400千円 国際会議に出席する登録料、旅費、滞在費などに計上予定である。 その他198千円 論文投稿料や英文校閲などに利用する予定である。
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