研究課題/領域番号 |
24510153
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
横井 裕之 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (50358305)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 電子・電気材料 / グラフェン |
研究概要 |
カーボンナノリボンの構造を決定するために、既存の顕微ラマン測定装置にピエゾ素子駆動ステージを組み合わせて、ラマン信号の各種パラメータについて高解像度の2次元マッピングが得られるようにした。レーザースポットのエアリーディスクサイズが0.78μmであるが、得られたカーボンナノリボンの幅と長さがそれぞれ100nmと500nm程度であったことから、メッシュサイズを0.5μmとしてラマンスペクトルを測定した。その結果、カーボンナノリボンの生成箇所に特有のラマンスペクトルを周囲の場所とは区別して系統的に得ることができた。G/D比と2D/G比を評価したところ、カーボンナノリボンは面内結晶サイズが24nm程度のグラフェンシートが2~3層積層した構造になっていることが示唆された。カーボンナノリボンの周辺に同時に生成するカーボンナノウォールよりもGバンドの半値幅が約20%小さくなることからカーボンナノリボンの生成機構がカーボンナノウォールのものとは異なることが示唆された。さらにカーボンナノリボンのTEMあるいはFE-TEMでの高分解構造観察を検討したが、同時に生成するカーボンナノウォールと分離してTEMグリッドにサンプリングすることが困難であった。そこで、結晶性向上と層数制御を図ると同時に、純度と生成量を向上させることを検討した。カーボンナノリボンは通常のCVD法では生成しないが、液面下CVD装置においては反応空間の温度勾配が高いという特徴がその生成に有利に働いていると予想されたので、合成基板の配置をさまざまに変えた合成装置を作製して合成を試みた。その結果、温度勾配が高い基板配置にするほどカーボンナノリボンが生成しやすい傾向があることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自動2次元走査顕微ラマンシステムを構築することにより、カーボンナノリボンの構造が2~3層のナノグラフェンの集合体である可能性を見出すことができたので、主要な目標の一つを達成できたと言える。一方で、構造制御と純度・生成量の向上という課題については合成条件の決定にまで至っていない。ただ、液面下CVD法の特徴である温度勾配を高めるほどカーボンナノリボンの生成に有利となる傾向は見出していていることから今後の研究の指針は立っている。そこで遅れは25年度中に取り戻せると考えているため。
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今後の研究の推進方策 |
まず、カーボンナノリボンの生成量向上を図ったうえで、TEM, FE-TEMによる構造の確定をおこなう。次にカーボンナノリボンの電気特性評価を行い、パターニングした基板上へ架橋型カーボンナノリボンを生成させることによりデバイス作製につなげる。 生成量の向上には、重要な生成因子の一つであると考えられる温度勾配の急峻性の制御を進める。同時に生成するカーボンナノチューブやカーボンナノウォールの生成を抑えることも課題であり、それについては、金属触媒の種類ばかりでなく金属触媒のゼオライトへの担持度を変えてカーボンナノリボンの純度向上を図る。電気特性評価においては、まず、金蒸着シリコン基板にゼオライト担持触媒を塗布したのちにイオンビームで溝を作製して、溝を橋渡しするように生成したカーボンナノリボンの特性を評価する。デバイス化のためには蒸着した金属を触媒としてカーボンナノリボンを作製する技術開発が必要となる。そこで、ゼオライト担持において有効であった触媒金属を蒸着してパターニングしたのちに電極間にカーボンナノリボンを生成させることにより、電界効果トランジスターを作製してその特性を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は消耗品のみであり、設備備品の購入計画はない。消耗品は主に合成実験に用いる有機液体や基板材料、ガス類に80千円と、合成実験の器具や電極部材に98千円を割り当てて、計178千円を使用する計画である。旅費は国内の学会での発表を2回するために合わせて160千円使用する計画である。その他に、FE-TEM、集束イオンビーム装置、FE-SEMの使用料と学会参加登録費や論文投稿料を合わせて、430千円を使用する計画である。
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