研究課題
本研究では、高輝度放射光粉末回折法により、多孔性配位高分子(PCP)のガス吸着における構造情報から選択的ガス吸着の機構を解明することを目的として行った。平成26年度は、PCPにより覆われたPdナノ粒子複合体の水素吸蔵特性を明らかにした。HKUST-1と呼ばれるPCPで表面を覆ったPdナノ粒子複合体の水素吸蔵・放出過程のX線回折データその場測定と構造評価を行った。その結果、表面を覆わないPdナノ粒子に対して吸蔵量で約1.7倍、かつ吸蔵速度でも約2倍の向上が見られることが明らかになった。研究期間を通した代表的な成果のひとつとして、高い構造柔軟性を持つInterdigitate型PCP [Cu(dhbc)2(dpa)]nのCO2吸着状態の結晶構造の解明が挙げられる。この物質の骨格構造は、通常この型のPCPに見られる配位子同士のπ-π積層による結合状態とは異なり、配位子間にも細孔が形成され、高いCO2吸着能を示していることが示唆された。もうひとつは、Cu-CHDの酸素分子吸着構造の解明である。Cu-CHD細孔内に吸着した酸素分子は、30 KでH型のダイマーを形成し、温度上昇に伴いS型に配列が変化することがわかった。この配列の変化は理論計算や、磁化測定の結果をうまく説明した。そして、異なるPCP CPL-1における結果との比較により、両物質での違いが骨格構造の柔軟性と酸素分子が細孔から感じるポテンシャルに依存していることが明らかになった。以上のように、当初目的に掲げた精密電子密度解析までは至っていないものもあるが、放射光粉末回折法によりPCPにおける構造柔軟性と選択的ガス吸着の関係を明らかにすることができた。また、選択的吸着を示さないPCPではあるが、水素吸蔵能の向上や、構造柔軟性とホスト-ゲスト相互作用の関係などPCPのガス吸着に伴ういくつかの新しい知見が得られた。
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