研究課題/領域番号 |
24510155
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
岡井 大祐 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60336831)
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研究分担者 |
本山 岳 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (20360050)
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キーワード | アモルファス合金 / 金属ガラス / ナノ結晶 / 超電導体 |
研究概要 |
金属材料の高強度化の方法の一つとして,材料の微細組織化がある.今年度は,単ロール液体急冷法によりアモルファス相とナノ結晶相からなる複合組織を有する超電導合金を作製し,この前駆体合金を用いて熱処理を行った.前駆体合金の部分的結晶化,または完全結晶化を促し,前駆体からナノ超電導合金を創製することを試みた.合金は(Zr,Ti)-Nb系液体合金であるZr55Co30-2xAl15TixNbx合金とした. 高分解能透過電子顕微鏡(HR-TEM)による合金の組織観察から,Zr55Co30-2xAl15TixNbx前駆体合金は,10~20nm程度のナノ結晶がアモルファス構造中に分散した組織を有する合金であり,4K以下で超電導転移を示した.結晶化開始温度近傍で熱処理を施したZr55Co9Al15Ti6Nb15前駆体合金では,ナノ結晶粒の粒径が30nmにまで成長し,またアモルファス相中に分散しているナノ結晶の体積率も増加した.アモルファス相から析出したナノ結晶相として,Zr2Co,ZrCo,Zr6CoAl2であると同定された.Al,Nb元素は析出相中に固溶していると推察された.このナノ結晶電導合金のTc,onは4.5Kを示し,前駆体合金のTc,on(2.7K)からTcの上昇が確認された.今年度の成果として,Zr55Co9Al15Ti6Nb15前駆体の熱処理によりTc,onが4.5Kのナノ超電導合金を創製することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(Zr,Ti)-Nb系金属ガラス前駆体において,①Zr-Nb系,②(Zr,Ti)-Nb系,③ Ti-Nb系結晶合金のナノ超電導金属ガラス化を行う計画である.昨年度の①Zr-Nb系合金の微細組織化から得られた作製条件を利用して,今年度は②(Zr,Ti)-Nb系合金を微細組織化することでアモルファスとナノ結晶の複合組織化を行い,Zr55Co30-2xAl15TixNbx超電導性金属ガラスの作製を行った.薄帯形状の(Zr,Ti)-Nb系超電導性金属ガラス前駆体の作製に成功した.熱処理により前駆体から作製したナノ結晶超電導合金は4.5KのTc,onを示し,前駆体より高Tc化が実現できた.バルク前駆体の作製も試みたが,ガラス形成能の高い合金の作製には,さらに作製条件を最適化する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
Ti高融点材料であるTi元素量が増加するに伴い,(Zr,Ti)-Nb系金属ガラス前駆体の作製の難易度も増している.この点は,研究計画の立案の時から,想定していたことであるが,前駆体の作製条件をさらに精査し,作製条件の最適化を検討する. ①Zr -Nb系,②(Zr,Ti)-Nb系バルク前駆体の作製も試みる.また,Zr55Co9Al15Ti6Nb15前駆体のTc,onよりナノ結晶超電導合金のTc,onが高いことが示された.Zr55Co9Al15Ti6Nb15超電導合金でのナノ結晶化によるTcの上昇の要因についても検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
計画していた消耗品(熱処理用石英管,試薬品)の使用量が少なく,当初の予測より購入量が少なく済んだことが要因である. H25年度の繰越金とH26年度の予算から,試料作製のために必要な消耗品(金属原料,鋳造用鋳型,熱処理用石英管,Arガス,試薬品,分析用消耗品など)の購入を行う. また,国際学会,国内学会での成果発表のための参加費,渡航費および滞在費に充てる.
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