研究課題/領域番号 |
24510156
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
馬場 則男 工学院大学, 情報工学部, 教授 (80164896)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 電子線トモグラフィ / 電子顕微鏡 / 逆問題 / 画像再構成 |
研究概要 |
ディジタル画像における1画素1諧調部分に相当する量子化単位は、全ての画像の基本要素である。全ての画像はこの単位の膨大な数の立体配置によって決まるとする。ここで、立体配置とは、画像の平面に対して、濃度諧調をその平面に対して垂直軸とし、その方向に量子化単位を積み上げて濃度が生ずると解釈する考えのことある。このようなこれまでに無い新たな考えに基づくCT断層像の再構成法を提案している。(非線形離散濃度諧調再構成法) 電子線CTでは一般に試料を±60°~70°にしか傾斜できないため、その情報欠落部分により不完全な断層像しか得られなかった。しかし、この新たな方式を使って、理想画像が持つ拘束条件、すなわち、各等濃度諧調断面は複数の連続領域から成る、を規範に演算を行うことで情報欠落の影響を除いた断層像が得られる。この再構成法の汎用化に向け、演算アルゴリズムを改善することが本年度の目的であった。 その結果、主な成果として、それまで少ない諧調数(3~4諧調まで)であったものが、何諧調まででも安定的に増やせるアルゴリズムが考案できた。本アルゴリズムの概要は、量子化単位の量子濃度レベルを高い状態からはじめ、徐々に低いレベルに、諧調数の増加(2,4,8,…、と倍増手法)とともに下げていく方法である。複合ナノ粒子のTiN-Ag試料の再構成に応用した結果、メモリーの制限から上限はあるものの、情報欠落による歪や偽像のほぼ無い状態で、128諧調のほぼ連続諧調に近い断層像が得られた。これにより、一般試料への応用も加速され、実用化が早められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績の概要で述べたように、それまでの断層像では少ない諧調数(3~4諧調まで)であったものが、何諧調まででも安定的に増やせるアルゴリズムが考案できた。この方式は、諧調数を反復演算ごとに倍々に増加できる方式のため、通常の自然な画像とされる256階調をわずか8回の反復で達成できるため、直接的に256段階の演算回数ふむ必要がなくなった。これは、大幅な高速化と、しかも安定な演算法が実現できたことになり、研究目的に大きく近づいたことになる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究テーマの「非線形離散濃度諧調再構成法」の安定的、かつ高速な演算アルゴリズムが考案できた。これを受けて、当初の計画通り、25年度以降、並列演算方式への発展も行い、更なる演算速度の高速化と、応用実験を推進していく。最も困難と思われる試料は、複雑な形態のある生物試料で、電子線損傷の影響を抑える方法の改善・工夫がいる。しかし、本演算法自体に、少ない投影像枚数からでも再構成が行える特徴を原理的に有しているので、この点を活かし、検証をはやめ、真の汎用化、実用化を促進する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
新たな再構成法によるトモグラフィー応用実験を促進する観点から、電子顕微鏡試料作製関連の物品費に充当する予定である。
|