研究課題/領域番号 |
24510157
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
谷口 昌宏 金沢工業大学, バイオ・化学部 応用化学科, 教授 (30250418)
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研究分担者 |
山岸 晧彦 東邦大学, 理学部, 訪問教授 (70001865)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 走査型アトムプローブ / 質量分析 / アミノ酸 |
研究概要 |
質量分析は微細領域での高感度元素分析ができるキャラクタリゼーション手法として広く認知されている。有機物、生体関連分子の化学分析においては、元素分析とは別に分子種の特定ができることが望まれるので分子イオンの検出を主眼においたソフトイオン化手法の確立が望まれている。 本研究で用いられる走査型アトムプローブ(Scanning Atom Probe, SAP)はアトムプローブ(Atom Probe, AP)を元にして、APにおける試料への制約を取り払った装置である。APは個々の原子を電界蒸発と呼ばれる現象により陽イオンとして取り出し、直接的に逐一検出する装置である。電界蒸発によるイオン生成においては、試料が気体、原子状態であることは必要なく、固体状態の試料の最外表面から個々の分子あるいは原子がイオン化して蒸発することが特徴である。 SAPを有機分子の分析に適用するにあたり、H24年度は試料保持温度の調節機構の設計と組込み、試料を担持する下地素材の前処理の検討、生体分子の例としてアミノ酸のなかでの分析候補分子の探索を行なった。試料温度調節機構は従来室温で行なってきたAP分析を低温で行うことで試料分子の蒸発脱離を抑制し、また分子の拡散を制御するためのものである。冷却機構の組み込みにより、室温~-150℃での測定が可能であることを確認した。固体試料ではなく分子系の試料をAP/SAP分析する際に試料物質をカーボンナノチューブに担持することが有効であるが、カーボンナノチューブをわずかに親水性に改質することでアミノ酸のような極性の大きい分子の保持性が高まることが確かめられた。また、アミノ酸を網羅的に分析しライブラリを構築するための予備実験として、分子量が小さく蒸気圧の高いアミノ酸について単量体、二量体、三量体などのAP分析を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的のうち、分子系試料のAPによる分析条件の温度条件を最適化するための機構的な改良作業はほぼ終了し、実際の試料についての実測データを蓄えるべき段階にある。 次に、試料の担持法の改善については現在のところカーボンナノチューブの部分酸化法を試みた段階であり、さらに分子修飾による積極的な改質や、全く異なる素材を担持体として探索することも行っている。特性の優れたカーボンナノチューブは現在供給源が限られており、研究者らのグループ内で再現性よく得られる担持体の素材の候補として、導電性の高分子の分析を試みたところ、ポリアニリン、ポリピロールなどは再現性良くAP分析が可能であり、そこから得られるマスパターンが単純であることから、担持体として良い候補となる可能性を見出した。 アミノ酸の分析ライブラリの構築については、側鎖が単純であるために蒸気圧が高いアミノ酸については、AP分析に必要な真空条件の下でこれまで良いマススペクトルが得られていなかったが、二量体、三量体とすることでマススペクトルを得られるものを見い出した。これは試料保持温度を低温にすることとも関連する。 上記のように、実験手法の装置に関連する部分はほぼ達成している。また、試料の保持方法などは当初の目的を達成したものの、さらに改善できる見通しが出てきた。これらを踏まえた実際のデータの蓄積については、分析条件の試行錯誤が続いているために、まだこれから充実が必要と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
アミノ酸の分析ライブラリの構築: 20種類のアミノ酸を最小のグリシンより順次分析を進め、アミノ基やカルボキシル基と他の構成原子がどのように結合しているかを明らかにする。小分子量のアミノ酸については、試料作製時のpH設定などにより電離したイオン化状態を調節し、蒸発脱離を抑制する。 先端の化学修飾による試料分子の担持能の改良と分子拡散の制御: 小分子をSAPで分析する際、試料を強電界中で保持するための担体が問題となる。これまでに高純度SWCNTが担持体として優れていることを見出しているが、ここに両親媒性の分子系による緩衝層を設けることで保持能を高め、AP分析の再現性、イオン検出数を向上させる。また、これまで試料温度は室温で分析を進めてきたが、試料の熱脱離を制御することがイオン数の増加には必要である。ただし、熱拡散には電界蒸発を扶ける効果もある。そのために、試料冷却温度を変えて至適条件を探る。 イオン検出数の改善による元素組成比の検討とイオン同定能力の向上: 生体分子からはNH2+やO+の様に極めて質量数が近いフラグメントイオンが検出される。位置感知型二次元イオン検出器(2D-PSID)に直接脱離イオンを投影するSAPは質量分解能ではリフレクトロン型SAPに劣るものの、イオンの捕捉率においては逆に格段に優位にある。そこで、リフレクトロン型SAPと二次元検出器を用いた直接投影型SAPと連携させ、C、N、O、S等の同位体の存在比より検出イオンの同定の確度を高める。同位体ピークの計数含めて構成原子数をより正確にカウントする方式を開発し、検出イオンの同定の信頼性を高める。検出イオンを同定した後、構成元素ごとの原子数をカウントし、試料分子の組成比との一致を確かめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
試料の冷却機構など装置の能力向上のための作業は平成24年度に完了している。そのため、平成25年度(次年度)の研究計画においては、設備備品については消耗部品の交換は見込まれるものの、設備備品費は計上していない。直接経費の主要な部分は器具、試薬などの消耗品である。 消耗品は器具、試薬、寒剤の三つに大別される。器具については、試料調製のためのガラス器具、装置のための真空部品(銅ガスケット等、真空ポンプ油)、電子部品などである。試薬については生体分子関連(アミノ酸関連、緩衝溶液など)、担持体作製関連(金属素材)が主体である。寒剤については、ヘリウム冷凍機の他に液体窒素を使用するための費用である。 これらほぼ事前に必要量が判っているものの他に、アトムプローブ装置の検出器で用いるマイクロチャンネルプレートなどはカウント数に比例して消耗するので、平成25年度中に交換を行なう予定である。
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