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2013 年度 実施状況報告書

シリコン表面に埋め込まれたリン原子の電子状態と相互作用

研究課題

研究課題/領域番号 24510160
研究機関独立行政法人物質・材料研究機構

研究代表者

鷺坂 恵介  独立行政法人物質・材料研究機構, 極限計測ユニット, 主任研究員 (70421401)

キーワードシリコン / ドーパント / 走査型トンネル顕微鏡 / トンネル分光 / 第一原理計算
研究概要

本研究課題の目的は、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いてシリコン表面近傍に埋め込まれたリン原子の物性を計測し、シリコンデバイスのためのドーパントエンジニアリングにおける基礎的知見を得ることである。平成25年度の研究計画とその成果は以下の通りである。
(1)Si(100)表面第一層に埋め込まれたリン原子の構造をSTM計測とDFT計算によって明らかにした。第一層表面のリン原子はシリコンとヘテロダイマーを形成することが知られているが、先行研究では、リン原子が真空側に突き出たバックリング構造をとるとされている[PRB74, 113311(2006), JPC111, 6428 (2007)]。しかし、リン原子が真空側に突き出た場合と基板側に沈み込んだ場合の構造についてそれぞれDFT計算を行った結果、計算スラブがn型にドープされた場合リン原子が沈み込んだ構造が出現することが判明した。この構造を用いて得られたSTMシミュレーション像は、実験データとよく一致した。また、計算スラブが中性の場合、先行研究で報告されている通りリン原子が真空側に突き出た構造が安定となり、p型基板ではこのような構造が観察されることが予想される。
(2)バックゲートによってキャリア密度を制御するために、デバイス層50nm、酸化膜層200nmを持つ基板を準備する必要がある。昨年度既製品のSOI基板ではデバイス層と基板層間の絶縁が不完全であることが判明したため、2枚のウェハーを貼り合わせによりSOI基板を製作することを検討した。そのために、ウェハー貼り合わせや精密研磨の可能な業者の選定と打ち合わせを行った。
(3)リンを埋め込むためのシリコン堆積環境を整備した。
(4)昨年度、東北大学で得られたSi(100)清浄表面の角度分解光電子分光データの解析を行うために、DFT計算によりバンド構造の計算を行った。その結果、これまでの解釈とは多少異なり、価電子帯上端のバンドは最表面ではなくバルクに由来するバンドであることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)Si(100)第一層表面に埋め込まれたリン原子の電子状態:トンネル分光のデータ取得は予定通り完了した。DFT計算を用いて実験データと比較可能な状態密度計算とSTMシミュレーションを行った。その結果、基板のドーピング条件で出現するP-Siヘテロダイマーの構造が異なることが新たに判明し確認事項が増えたが、状態密度計算の最適化を残すのみである。よって計画は概ね順調に進展している。
(2)バックゲートによるキャリア密度制御:市販のSOIウェハーが利用できないことが判明したため、バックゲート実験に必要なウェハーを自主製作する必要が発生した。実現可能な業者と相談を続けている状態なので、計画はやや遅れている。
(3) 表面第二層以下に埋め込まれたリン原子の検出:リン原子をシリコン第一層表面に埋め込んだ後、シリコンを堆積して、リンを第二層以下に埋め込む。そのための蒸着装置およびチャンバーの整備を行ったので、計画は概ね順調に進展している。
(4)清浄なSi(100)表面のバンド構造解析:平成24年度に得られた角度分解光電子分光データの解析のために、DFT計算を行いバンド構造を求めた。実験と理論計算で比較できるデータが得られ、成果発表のために実験と計算の両方で細かな再現チェックを残すのみとなった。計画は概ね順調に進展している。
以上から、バックゲートによるキャリア密度制御以外の計画は順調に進展しているため、総合で計画は概ね順調に進展しているとした。

今後の研究の推進方策

本研究課題の最終年度は以下の課題に取り込むとともに、研究の総括を行う。
(1)Si(100)第一層表面に埋め込まれたリン原子の電子状態:DFT計算から、基板のドーピング条件によってP-Siヘテロダイマーのバックリング方向が変わることが判明したため、実験的にこれを確認する。バックリング方向によりヘテロダイマーの電子状態がどのように変化するのかSTMとDFT計算で比較しながら解析を進める。
(2)バックゲートによるキャリア密度制御:当該実験に適切なSOIウェハーの作製を全て外注するのは研究予算の観点から困難であるので、物質・材料研究機構の微細加工プラットフォームの利用を考慮しながら、ウェハーの製作を模索する。
(3)表面第二層以下に埋め込まれたリン原子の検出:実際にシリコンを堆積することにより、リン原子を表面近傍に埋め込み、STM観察を試みる。
(4)清浄なSi(100)表面のバンド構造解析:角度分解光電子分光データの再現実験とDFTによる確認計算を行い、研究成果を論文にまとめる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Adsorption of phosphorus molecules evaporated from an InP solid source on the Si(100) surface2013

    • 著者名/発表者名
      Keisuke Sagisaka, Michael Marz, Daisuke Fujita, and David Bowler
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 87 ページ: 155316-1-8

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.87.155316

    • 査読あり
  • [学会発表] STMとDFTによるリン-シリコンヘテロダイマーの研究2014

    • 著者名/発表者名
      鷺坂恵介
    • 学会等名
      共用・計測 合同シンポジウム2014
    • 発表場所
      物質・材料研究機構
    • 年月日
      20140314-20140314
  • [学会発表] Adsorption of phosphorus on Si(100) studied by STM and DFT2014

    • 著者名/発表者名
      Keisuke Sagisaka
    • 学会等名
      Condensed Matter Physics Seminar
    • 発表場所
      The University of Liverpool
    • 年月日
      20140211-20140211
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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