研究課題/領域番号 |
24510162
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
阪東 恭子 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (50357828)
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研究分担者 |
小林 英一 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター九州シンクロトロン光研究センター, ビームライングループ, 主任研究員 (80319376)
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キーワード | in situ XAFS / XRD / 無機EL / Tb / 繊維状アルミナゾル |
研究概要 |
2013年度は、年度初めより、in situ XAFSおよびXRD同時測定用の新規セルの設計に取り組んだ。サンプルを1000℃まで加熱するための機構の考案、サンプルが1000℃まで加熱されたとき、セルのX線透過窓を冷却するための機構の設計、反応ガス導入の方法、回折X線の取り出し角度の選定等を行い、製作の業者との数回の打ち合わせの後、2014年1月までに、プロトタイプのセルを完成させた。その後、2月に実際に九州シンクロトロン光研究センターのBL11において、5%Tbドープアルミナフィルムをサンプルとして、テスト測定を行った。ガスは窒素を20ml/min流しながら、段階的に温度を上昇させた。サンプルの昇温は、700℃ぐらいまでは順調であったが、700℃以上では、ヒーター出力を最大にあげてもサンプル位置では750℃までしか昇温できなかった。実験終了後、サンプルホルダーを取り出したところ、保温のためにサンプルホルダーの周囲に取り付けたシールドが熱で黒く変質し、サンプルにはホルダーから蒸着したとみられる着色が認められた。結果、ヒーターとサンプルの熱接触が不十分ななめ、サンプル位置ではない場所が過熱されていしまっていたことが示唆された。この結果をうけ、2014年度は、加熱方法を再検討し、より効率的に昇温できる機構への改良を目指す。 一方、測定されたスペクトルに関しては、300℃から500℃で母材のアルミナの結晶構造の変化がみられることが観察されたほか、同時にTb LIII-edge XANESにも変化が見られ、母材と共にTbの配位状態が変化したことが確認できた。この実験では、ビームタイムの制約があり、測定温度のステップ幅を細かく設定することができなかったので、2014年度は、測定方法を改良してより高い時間分解能で測定し、温度変化を細かく測定することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題申請時は、2013年度1000℃までの加熱条件下でのin situ XAFSおよびXRD同時測定を計画していた。実際には、1000℃加熱の試験は行ったものの、試料温度は750℃まで到達するにとどまったので、完全に目標達成とは言えないが、第1段階として考えていた500℃まで加熱は容易に達成することができたこと、試料位置での温度は1000℃まで上がらなかったが試料ホルダー上部の熱による変質の状態から判断すると、ヒーター至近は1000℃近くまで昇温されていたことが予想されるので、あとは、ヒーター部分と試料部分の熱伝導の改善で2014年度には達成可能と予想される。また、XAFSおよびXRDスペクトルに関しては、時間分解能は高くないが、XAFSとXRDを連続したスキャンで測定することに成功し、最終目標の時分割同時測定実施のための指針を得ることができた。以上のようなことから、2013年度は目標をほぼ達成したものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は本課題の最終年度となるため、時分割in situ XAFSおよびXRD同時測定によるTbドープアルミナナノ粒子ゾルの詳細解析を実施することを目標とする。前述の通り、現在セルの改良を行っている所であり、X線を照射しないオフライン条件で、目標が達成できるかどうか確かめながら、セルの改良を進め、少なくとも900℃での加熱条件下でのin situ XAFSおよびXRD時分割同時測定の実現を目指す。様々な改良を11月まで行い、12月に九州シンクロトロン光研究センターで検証の実験を行い、そこでの修正点を更に改良を加え、2015年2月に最終的な実験を実施することを目指す。その間、各種無機ELに関して、EL, PL等の物性測定を別途行い、高い性能を発現する可能性のある条件の洗い出しも行い、XAFSおよびXRD同時測定実施時の条件設定に有用な情報の収集にも努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
達成度の項で述べた通り、当初2013年度は新規セルを作成し、テスト実験をした後、改良するところまで行うことを計画していたが、計画が若干遅れ、改良作業に入ることができなかったので、その分の費用を次年度に繰り延べたため、差額が生じたものである。 前項で述べた通り、2014年度は、この差額を利用してセルの改良を行い、当初計画の1000℃でのin situ XAFSおよびXRD同時測定実験を実施する計画である。
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