研究課題/領域番号 |
24510163
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
山田 俊樹 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所ナノICT研究室, 主任研究員 (10359101)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光学顕微鏡 / イオン性液体 / 単一分子分光 / 高真空 / 表面プラズモン / ラマン散乱 |
研究概要 |
本研究の目的は、イオン性液体を屈折率マッチング媒体として用い、高開口数(NA:1.3~1.5)の液浸対物レンズを高真空中(~10-6 Torr)に置く光学配置を用いる新規顕微ユニットを様々な分光計測(蛍光検出による単一分子分光、顕微ラマン散乱分光計測、表面プラズモン顕微計測、非線形顕微計測等)への広範な応用を実証していくとともに様々な物質系に適用していくことである。本年度は主として高真空中及び周囲ガス環境中での単一の蛍光体(蛍光色素)に対するデフォーカスによる双極子放射パターンの観測を試みた。単一の蛍光体の双極子放射パターンの観測はこれまで高真空中では行われてきたことがない。この観測では高開口数が必要であり新規顕微ユニットの優位性を活用できると考えられる。 この研究に必要な自家蛍光が小さく、屈折率のマッチングよい、不揮発性のイオン性液体を見出し、そのイオン性液体を利用することにより、高真空及び周囲ガス環境下(高純度窒素中)での単一の蛍光体の双極子放射パターンの観測に成功した。また論文を執筆し、出版された(IEICE Trans. Electron. Vol.E96-C, pp.381-382, 2013))。 この他、本研究に部分的に関連する、単一蛍光体周りの誘電環境の制御を試み、誘電体の周期構造である2次元フォトニック結晶を作製し、輻射場の制御を行った。フォトニックバンドギャップ中の単一の蛍光色素からの蛍光寿命の長寿命化も確認した。単一蛍光体の輻射場の制御に関する論文も執筆し、出版された(J. Am. Chem. Soc., Vol.135, pp.106-109, 2013))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は真空中で使用可能な屈折率マッチング媒体としてのイオン性液体と液浸対物レンズを用いた顕微ユニットの優位性を活用し、高真空中及び周囲ガス環境中(高純度窒素中)での単一の蛍光体(蛍光色素)に対するデフォーカスによる双極子放射パターンの観測の観測に成功した。この他、単一蛍光体周りの誘電環境の制御を試み、誘電体の周期構造である2次元フォトニック結晶を作製し、輻射場の制御を行った。フォトニックバンドギャップ中の単一の蛍光色素からの蛍光寿命の長寿命化も確認した。 イオン性液体と液浸対物レンズを用いた顕微ユニットの様々な光計測(表面プラズモン、ラマン散乱計測)への応用のため、それぞれの計測に必要な様々なイオン性液体の特性評価(屈折率マッチング、自家蛍光)を行い、イオン性液体の選定を行った。これらの結果をもとに顕微ユニットと表面プラズモン計測あるいはラマン散乱計測を組み合わせた光学系の構築準備を始めた。 新規顕微ユニットを用いた蛍光を検出する単一分子分光においてはかなりの進展がみられたが、顕微ユニットの表面プラズモン、ラマン散乱計測への応用に関しては少し遅れている部分もある。全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
イオン性液体と液浸対物レンズを用いた顕微ユニットと表面プラズモン顕微計測を組み合わせた測定系を構築する。有機薄膜に対し、高真空中や様々な周囲ガス環境下において、屈折率空間分布を反映した表面・界面微細構造評価を行っていく。この研究では、必要とされるイオン性液体の物性は、不揮発性、高度な屈折率のマッチングであろう。 顕微ユニットとラマン散乱計測を組み合わせた測定系を構築する。後方散乱配置で計測することを想定している。顕微ラマン散乱計測においても、必要とされるイオン性液体の物性は、不揮発性、低い自家蛍光、屈折率のマッチングであろう。低い自家蛍光がどの程度必要かは計測対象にもよるのでこの点に留意しながらイオン性液体の選定を行う。またイオン性液体自身からの自家ラマン散乱にも留意しながら、イオン性液体及び測定対象の選定を行う。有機・バイオ薄膜などの高真空中や様々な周囲ガス環境下において、ラマンスペクトル変化を反映した表面・界面微細構造評価を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使途としては、主として顕微ラマン計測用の分光器、挟線幅のダイオードレーザーの購入を計画している。上述の実験と関連した光学部品及び試薬の購入を計画している。当該年度に液浸対物レンズの購入を予定していたが、その消耗度は小さく当該助成金(B-A)150400円を次年度液浸対物レンズの購入のために使用することとした。
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