研究課題/領域番号 |
24510167
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
新ヶ谷 義隆 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (40354344)
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キーワード | 光触媒 / 酸化物ナノロッド / 原子間力顕微鏡 |
研究概要 |
平成25年度は酸化タングステンナノロッドを局所化学反応誘起プローブとして使用する際に、ナノロッドの先端部分に効率的に近接場光を集めるために、ナノロッドの尖鋭化に関する研究を行った。尖鋭化の方法としては、はじめに電界蒸発を用いた。タングステンティップ上に成長させた酸化タングステンナノロッドに、対向電極としてのタングステンティップを光学顕微鏡下で近接させた。この際、対向電極としてのタングステンティップはチューニングフォーク型水晶振動子の先端に取り付けて周波数シフトをモニターすることにより、位置フィードバックをかけて、正確にナノロッドと対向電極間にナノギャップを作り出せるようにした。 しかしながら、この方法では効率的、かつ再現性のよい尖鋭化を行うことはできなかった。多くの場合、ナノロッドの酸化あるいは還元による組成変化が生じてしまうことが問題であった。その場合、ラマン散乱分光によってアモルファス酸化タングステンに帰属されるピークが観察された。 この方法に代わって、ナノロッドを尖鋭化する有効な手段を見出した。それは水溶液中における局所光照射による溶解を用いる方法である。スポット径を1µm以下に絞ったレーザーを水溶液中で酸化タングステンナノロッドに照射する。この時、散乱光の強度はフォトダイオードによってモニターする。レーザー強度を徐々に増加させていき、散乱光の強度が減少し始めたところでレーザー強度を一定にして酸化タングステンの溶解を進行させる。溶解が停止したところでさらにレーザー強度を増加させ、溶解を進行させる。これを繰り返すことで、光照射部分を尖鋭化することができる。この方法により曲率半径5nm程度の尖鋭な先端を有するプローブが作製できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、酸化タングステンナノロッドの先端部分に近接場光を誘起するために尖鋭化することを主な目標としていた。当初計画していた電界蒸発法を用いた尖鋭化は実際には実現できなかったが、それに代わって、水溶液中における局所光照射法によって尖鋭化する方法を見いだした。したがって、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に構築した酸化タングステンナノロッドの光触媒活性を微視的に調べるためのセットアップを用いて、平成24年度に作製方法を確立した陽極酸化によるWO3セグメントを有するナノロッドの局所触媒活性を調べる。また、平成25年度に作製方法を確立した尖鋭化ナノロッドの局所触媒活性も同様に調べる。 また、これらの局所化学反応誘起プローブは生体細胞内外で局所的に化学反応を誘起し、局所刺激を行うために開発したものであるので、実際に生体細胞に局所化学反応誘起プローブを近接させ光を照射することによって化学反応を誘起できることを実証するための実験も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
既存の試薬、材料を使用することができたため、消耗品費などが予定していたよりも少ない額で済んだため。 最終年度は、装置開発や新たな実験セットアップの導入は行わないため、新たな計測機器などの購入は行わない。研究費は、主に金属材料、高純度試薬、カンチレバーなどの消耗品の購入に充てる。また、得られた研究成果を公表するための論文投稿費、および学会参加費にも研究費を使用する。
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