平成26年度は酸化タングステンナノロッドを局所化学反応誘起プローブとして使用する際に必要となるマルチプローブ原子間力顕微鏡の開発を重点的に行った。本研究では一つのプローブを局所化学反応誘起プローブとして用い、そのプローブ先端で生じた化学反応生成物を近接させたもう一方のプローブで高感度検出することを目指している。化学反応誘起プローブの先端には光触媒として働く酸化金属ナノロッドを取り付ける。 我々がこれまでに構築しているチューニングフォーク型水晶振動子を用いたマルチプローブ原子間力顕微鏡を溶液中で動作可能なものへと発展させた。チューニングフォーク型水晶振動子には直径0.1mm長さ7mmの非常に長いタングステンティップを取り付け、ティップとチューニングフォークの電極間は電気的に絶縁した。水浸型対物レンズを用いてそのレンズと試料表面との間に水滴を作り、表面張力によって保持された水滴に横方向からタングステンティップを挿入した。周波数変調原子間力顕微鏡法により形状像が得られた。この際、振動振幅をできるだけ小さくするために高次の共振を用いた。溶液の蒸発に伴う大気溶液界面位置の変化が見られ、それによる共振周波数の時間依存変化は見られたものの少なくとも2時間は、安定に原子間力顕微鏡観察ができることを確認した。また、複数のプローブを用いて同時に原子間力顕微鏡観察ができることも確認しており、プローブ先端同士の距離を890nmまで近づけても問題なくイメージングができることを確認している。また、実際にプローブの先端に酸化タングステンナノロッドを取り付けた状態でも溶液中でイメージングが可能であることを確認した。
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