研究課題/領域番号 |
24510169
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
下川 房男 香川大学, 工学部, 教授 (90580598)
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研究分担者 |
高尾 英邦 香川大学, 工学部, 准教授 (40314091)
小林 剛 香川大学, 農学部, 准教授 (70346633)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究では,MEMS技術をベ-スに,従来の1/10以下の寸法の「超小型の植物水分動態センサ」を実現し,これまでの樹木の主幹部の樹液流量の測定に対し,植物の新梢末端や果柄等の細部の樹液流量の測定を初めて可能とし,以って植物全体での水分動態測定に関する知見を得ることを目的としている. 当該年度は,提案したセンサのプリプロト試作に向けて,センサを構成する各部(マイクロプロ-ブ,薄膜ヒ-タ,温度センサ)の構造設計を行うと共に,センサの製作に必要なプロセス要素技術検討を推進した.具体的には,二つのSiドライエッチング技術を組み合わせて(プロ-ブ先端部はRIEによる異方向性エッチング,柱部はICP-RIEによる垂直方向性エッチング),目標としたプロ-ブ径φ0.1mm,プロ-ブ長さ:0.3mmを有する針状形状のプロ-ブ製作に見通しを得ると共に,薄膜ヒ-タ(Tiヒ-タ,Au配線),温度センサ(pn接合ダイオ-ド)の製作に目途を立てた. 次に,これらのプロセス要素技術検討を基に,プリプロト試作を推進し,試作したセンサを用いて,センサ単体での基本性能評価を行った.具体的には,製作したマイクロヒ-タ(ヒ-タ電力:約0.1W)において,従来の市販センサと同程度の40~50゜C程度のプロ-ブ温度が得られることを確認すると共に(赤外線サ-モグラフィによる直接測定),温度センサについては,20~85゜Cの範囲で測定可能なこと(感度:-4.4mV/゜C)を明らかにした. 以上のように,MEMS技術を駆使して,提案した「超小型の植物水分動態センサ」をSiチップ上に一括形成(機能集積化)可能なことを実証する共に,センサ単体での動作検証に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は,「超小型の植物水分動態センサ」を実現に向けて,そのマイルスト-ンとして,①センサの構造設計とプロセス要素技術検討の推進,②プリプロトタイプ試作とセンサ単体での基本性能の検証を目標に掲げて,以下に記載するように,当初の目標とした研究成果が得られた. まず,本研究の重要な目標である「超小型の植物水分動態センサ」の実現性については,MEMS技術を駆使することにより,プロ-ブ径φ0.1mm,プロ-ブ長さ:0.3mmを有する針状形状のプロ-ブを製作可能なことを示すと共に,センシングに必要な薄膜ヒ-タ,温度センサを1チップ上に機能集積化できることを確認した.更に,製作した「超小型の植物水分動態センサ」において,従来の植物水分動態センサと同様に,必要な機能であるヒ-タ加熱や温度測定が可能なことを明らかにし,センサ単体での動作検証に成功した. このように目標に掲げたセンサの小型・集積化の実現性に見通しを立てると共に,そのセンサ単体で性能確認も予定通りできた.このことにから,従来のセンサでは,絶対測定できなかった植物の新梢末端や果柄等の細部の測定に向けて,着実に研究を推し進めることができた. 以上の進捗から,当該年度は,概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は,昨年度のプリプロトタイプ試作の結果を反映させ,更にプロセスの最適化検討を推進することで,「超小型の植物水分動態センサ」のプロトタイプを製作する.この試作センサを用いて,まず疑似植物測定系(疑似的な植物維管束として,おが屑等が充填されたマイクロチュ-ブ内に,マイクロポンプにより流量制御された水を流し,更に流量の絶対値をマイクロ電子天秤により測定する実験系)を構築し,その実験系を用いて,水分動態測定の基本実験を進め,センサの有用性に関する検証実験を行う.具体的には,植物の新梢末端での水分動態測定を想定し,細径チュ-ブ(φ1~2mm程度)での測定を行い,その定量化を行う.更に,センサの高速応答性・良好な動作安定性について評価を行なう(従来のセンサは,樹木への設置作業から安定測定開始までに一昼夜程度を要するが,本センサでは設置から測定開始まで,短時間に測定が可能). 更に,H26年度は,改良版センサの製作を進め,センサの完成を目指すと共に,センサを実際の植物の水分動態測定に適用し,総合検証実験を進める.具体的には,本研究の最終目的である植物環境と新梢末端等の細部を含む植物全体としての水分動態に関するセンシングを試みる(従来のセンサを用いて,主幹部の樹液流測定を行なうと共に,植物の新梢末端果柄等に本提案のセンサを多点に配置することで,それらの樹液流量の相関関係を調べる).これらの実験を通して,植物全体としての水分動態に関する知見を得る.
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究推進の方策に記載したように,「超小型の植物水分動態センサ」のプロトタイプを製作を行うために必要なプロセス消耗品の購入(Siウエハ等の基板材料,化学薬品やガス等の消耗品)にあてる.また,水分動態測定の定量化や季節に捉われず水分動態の安定な測定が可能な疑似植物測定系を構成するために,その製作・測定に必要な消耗品(チュ-ブ,継ぎ手等)や備品(マイクロポンプ)の購入を計画する.更に,植物の維管束情報を観察するために,簡便なマイクロスコ-プを購入する予定である. また,本研究において得られた研究成果の国内外への情報発信に向け,出張旅費を計上する.具体的には,国内のMEMS関連の最大の会議である電気学会のシンポジウム(センサ・マイクロマシンとその応用)と植物生体情報計測に関する国際会議(Plant Vascular Biology)に参加する費用を計画している.
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